2023年4月、理工学部は創域理工学部へと名称を改めた。もともと、”物事の本質を見極める理学 〞と” その知見を応用する工学〞とが融合する理工学部では、学科の枠を超えて共響しあう、多くの研究が進んでいた。その特長をさらに強化し、また、複雑化・多様化する社会の要請に応えるために、既存の分野を横断して領域を創造する学部へと進化した。そのための、学部における特長的な教育の一つが『創域特別講義』である。野田キャンパスにある創域理工学部と薬学部の1200人を超える学生が履修する。滝本教授は言う「1年次の前期に創域とは何か、そして共響が持つ力を理解する『創域特別講義』があって、大学院生になったら他専攻の研究室で融合教育研究を行う『創域融合特論』があります。その間に、数学・物理・化学などの基礎科目の共通化があり、異なる学科間でも同じ言葉で議論できる環境を整備しながら、知識の共通基盤を形成していきます。そのように分野横断的な考え方をだんだんと高めていくわけですが、いちばん最初の入口が『創域特別講義』です」。
授業の前半はオムニバス形式で行われ、週2回の授業では、4つのテーマについて学ぶことになる。創域理工学部の10学科11専攻、薬学部2学科の教員と社会で活躍する卒業生が、各学科の専門分野や最先端の研究などを説明していく。そして後半では、教養の教員による、より俯瞰的な見地の説明につながる。数学や化学などから、薬学、建築、機械、情報工学、さらには中国思想やスポーツ科学と幅広い講義が用意されている。「教員や卒業生の方々には、単に自分の専門を説明するというよりも、分野を超えた融合的な取り組みについて話してもらうようにお願いをしています」と滝本教授。学生たちは、講義を聞くとともに、5、6人でグループを組み、毎週4つのテーマから一つ決められる課題についてレポートをまとめていく。滝本教授は言う「グループは学科の異なる学生でつくられていて、協働で一つのレポートを提出します。やり方は自由ですが、そういう段取りをつけるところも、融合的なアプローチの第一歩だと考えています」。
学部から修士課程に進むと、専攻を跨いだ幅広い分野から参加できる横断型コースが用意されている。そのための準備が学部から始まっていると捉えてもいいだろう。滝本教授は言う「我々には、融合することの難しさが骨身にしみています。分野の違う人たちが 話を始めてみると、専門用語が通じないわけです。そういうことをなくしていきたいというのが、この講義の本来的な意味だと思います」。授業の最後の質疑応答では、「共同研究はどうやって始めたらいいのですか」という質問が学生からあったのが興味深かった。教員は「私は、とにかく話しかけて、何が専門か、どんな研究をしているのか聞きます」と答えていた。学生は、それなら自分もできると思ったことだろう。そして、教員は「辛抱しないといけない。そうしないと何も見えてこない」とも話していた。難しそうで実は簡単で、簡単そうで実は難しい。創域へ向けた取り組みが、確実に動き出している。
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主な研究内容