2023.10.27
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都市防災、都市文化など、ハード面からソフト面まで複合的に都市を研究。

都市は、いうまでもなく複雑だ。都市環境、都市生活などの諸問題は、各研究分野の成果だけでは克服できないことが多い。そこで都市を複合的に研究しようというのが総合研究院 先端都市防災研究部門だ。部門には多くの専門家が集まっている。高橋教授は、建築構造が専門であり、免震、制振、耐震のための技術を研究開発してきた。世界初の建築制振用オイルダンパーブレースを開発し建物に実装したり、最近では高アラミド繊維による高性能ロープを建築構造部材として実用化するための研究をしている。「オイルダンパーは、新幹線のものを改造して建物に入れました。アラミド繊維は、主に既設の住宅の補強に使っています。地震の後の建物や古民家の補強にも使えます」と高橋教授。一方、伊藤教授の研究は、都市計画であり、インフラ整備、都市建築のようなハード面から都市ブランディング戦略のようなソフト面まで幅広い。その中でも、街づくりのためのひとつの重要な概念として、シビックプライドの研究に取り組んでいる。

都市計画のための具体的な科学的知見をそれぞれの地域に還元。

現在、高橋教授は研究室の学生とともに、富山県射水市で銭湯として使われていた建物を改修して地域の交流拠点に再生する「富山銭湯空き家プロジェクト」に取り組んでいる。いわゆる古民家の再生は、建築構造を専門とする高橋教授の得意とするところだ。「掃除に行ってテレビ局が取材に来ると、人がたくさん集まってきます。建物の再生が、人の活性化につながって、街の再生になればいいと思いますね」と高橋教授。伊藤教授は、さまざまな街でシビックプライドの実態を調査してきた。これからの街づくりに欠かせない概念として、それを明らかにしていこうとしている。「誰かがつくった街に住まわされるのではなく、自分で動いて街を良くしていく。そういう当事者意識を持って、良い未来をつくっていこうという自負心がシビックプライドです。その気持ちは眠っているかもしれませんが、どこにでもあるはずのものです」と伊藤教授。

様々な知見を統合し、都市再生計画のモデル化をはかる。

先端都市防災研究部門は、これまで神楽坂地区の再生計画づくりなどを手掛けてきた。地域の大学、行政、企業、市民と連携しながら、地域の今後の姿について議論し、地域の総意を広く情報発信することで、地域再生の社会的気運を高めていくという活動だ。その中で、具体的な調査分析、改善提案などを示し、都知事への政策提言なども行なっている。さらに、今後の展開としては、国、東京都、新宿区、葛飾区との防災協働を推進。防災対策コンテナの提案、事前応急危険度判定アプリの開発など、東京理科大学発の防災都市提案を行なっていくことが決まっている。高橋教授は言う「研究室単位でやるものはさきがけなので、規模は小さいですね。小さいものも好きですが、街とか地域全体の再生など、大きなものも好きなので研究部門の先生たちにも協力してもらって、やっていきたいですね」。新しい都市の姿は、もうすでに、先生の頭の中で、完成しつつあるのを感じた。

工学部 建築学科
髙橋治 教授

■ 主な研究内容

専門は、建築構造。構造設計、構造解析、免震、制振、耐震など、構造技術で社会のデザインを目指す。世界初、建築制振用オイルダンパーブレースを開発。最近では、地震危険度判定アプリ〔被害ナビ〕の開発も行っている。

創域理工学部 建築学科
伊藤香織 教授

■ 主な研究内容

専門は、都市計画学。都市解析や都市デザインに携わる。

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