2023.10.27
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方程式を使って、図形や点などの構造を考える学問。

代数学は、簡単に言うと方程式の解法などを研究する学問であるが、代数幾何学、整数論などさまざまに広がり、応用研究も活発に行われている。その中で、代数幾何学を専門にしているのが伊藤教授だ。「方程式を使って図形の性質を調べるというのが、いちばんシンプルな言い方ですが、絵に描けない高次元のものを考えていたりします。実数だけではなく複素数を使って形を考えたりすると、もはや絵に描けなくなってしまうので、それを方程式を使って調べていると言えます」と伊藤教授。一方、木田教授は、代数的整数論の専門家である。「図形自体を調べる代数幾何学と違って、我々は図形やグラフの上に載っている整数を成分にもつ点、つまり整数点を考えています。同じ図を見るにしても、代数幾何的手法と整数論的手法では分かる部分が違ってきます」と木田教授。こうした違いがとても大切で、違うからこそ数学では共同研究が重視されることになる。

2つの脳を使うことができる共同研究の必要性。

同じ、もしくは似た対象に対して、違うアプローチで研究をしている2人の出会いは刺激的であることが容易に想像できる。それは、2つの脳で考えるということになるからだ。実際に、国際会議などでも、講演会を聞くその一方で、研究者同士が議論をする場をつくることが大切にされているという。木田教授は言う「研究をしていくと、必ず、自分に足りない部分が出てきます。それを違った研究をしている人に相談すると、そこから共同研究に発展したりします」。「今まで分からなかったことが、別の手法を使うことで見えてくるということがあり、未解決だった問題がそのおかげで解けましたということが起こりうるのです」と伊藤教授。しかし、コロナが流行した。「直接会って話す時間は濃密でとても大事でした。それが失われたことで共同研究が思うように進まなくなった部分はあります」と木田教授。ここでも、コロナの影響が深刻な影を落としていたようだ。

多くの数学者が集う先端的代数学融合研究部門。

理論と理論、手法と手法を持ち寄り、刺激を与え合う。それをより大きな規模で行い、研究を進めていこうというのが先端的代数学融合研究部門である。ここには代数学中心の研究者に加え、代数学ベースの応用研究を扱う研究者が集まっている。伊藤教授は言う「数学は理工系の教育の中では基本であり、科学技術の根幹をなすと言ってもいいでしょう。東京理科大学には優秀な数学者が多く在籍し、その専門領域は数学のほぼ全分野が網羅されています。部門では、その中から代数学系の研究者たちが集まっています」。これから、この部門がどのように社会の中で役立っていくのかを聞いてみた。「代数学はとても抽象的なので、さまざまな分野向けにカスタマイズして使っていくことができます。そこが、代数学の強さですね」と木田教授。その強さを証明するかのように、数学を学んだ学生に対する企業からの求人は増えているそうだ。

創域理工学部 数理科学科
伊藤浩行 教授

■ 主な研究内容

専門は、代数幾何学、応用代数学。たくさんの多変数多項式の共通零点により定義される代数多様体をさまざまな角度から研究している。

理学部第一部 数学科
木田雅成 教授

■ 主な研究内容

専門は、代数的整数論、代数学、計算整数論。ある種の性質をもつ代数体や多項式の構成を目標としている。

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