2023.10.27
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さまざまな物理現象を記述することができる微分方程式を使った研究。

解析学という言葉を知らなくても、微分積分は耳にしたことがあるのではないだろうか。微分積分は、ある関数の変数を少しずらした場合、その関数の値がどれくらい変化するのかを求める計算式であるが、実際にはもっと複雑だ。解析学は、応用分野において微分方程式を用いたモデルなどを解くために発展して、理学や工学でさまざまに用いられている。そんな中で、加藤教授は、変数の数が多い偏微分方程式の専門家だ。「振動とか、熱の伝わり方など、物理現象は基本的には偏微分方程式で記述できます。物理でもよく研究されていますが、数学的にもまだ分からないことがたくさんあり、研究をしています 」と加藤教授。一方、牛島教授の専門は非線形放物型偏微分方程式と数値解析である。 「私は自然現象や社会現象を記述するさまざまな数理モデルに興味があり、それに対する数学解析、数値解析を行なっています。具体的には交通の流れであったり、感染症の流行などをモデル化しています」と牛島教授。

理論の専門家と数値計算の専門家による共同研究。

加藤教授と牛島教授は、現在、物理学の中の量子力学の基礎方程式であるシュレーティンガー方程式に関する共同研究に取り組んでいる。加藤教授は言う「私はこれまで、シュレーティンガー方程式の効率的で長時間安定する数値計算スキームを開発してきたのですが、ある程度できるようになってきたので、数値計算に非常に明るい牛島先生に協力していただいて、その計算をコンピューター上でできるようにしようとしています」。ここでは、加藤教授が理論的な解の構成法の研究および数値計算法の試作を行い、牛島教授が具体的な数値計算法の開発を行なっている。シュレーティンガー方程式はミクロな物質の運動を記述する基礎方程式なので、共同研究がうまく進み効率的な計算法が見つかれば、物性物理学や化学などさまざまな分野で使われる可能性があるという。

数理解析に関する研究者が多数集まった数理解析連携研究部門。

微分方程式には、さまざまな種類がある。また、それを数学的に研究をしている研究者がいれば、問題解決のために使っていくことを考えている研究者もいる。そうした研究者たちを集めて、共同研究により研究の活性化を目指し、さらに数学と理学・工学の境界領域の研究へと広げていこうというのが数理解析連携研究部門である。加藤教授は言う「私は偏微分方程式を数学的に研究していますが、例えば建築であれば、建物の振動の計算などに使われていると思います。各分野で何が重要か違うわけですが、偏微分方程式は共通なので、各研究者が他所の分野に広がっていける可能性はあると思っています」。「得意なところが少しずつ違いますので、それを持ち寄れば幅広い分野で活用できるはずです」と牛島教授。東京理科大学における解析学の発展には、これからも目が離せないと感じた。

理学部第一部 数学科
加藤圭一 教授

■ 主な研究内容

専門は、偏微分方程式。量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式の解を、波束変換を用いた独自方法で表示し、数学的に研究している。

創域理工学部 数理科学科
牛島健夫 教授

■ 主な研究内容

専門は、応用数学、偏微分方程式、数値解析。特に非線形放物型偏微分方程式の解の性質を、数値解析・理論解析の両面から研究している。

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