2023.10.27
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教養と専門の有機的な連携へ、教養教育研究院。

多様化、複雑化する現代において、教養教育の重要性を聞く機会が増えてきた。倫理的な思考や異文化への理解を広げてくれるものとして、また、問題解決力や創造性を備えた人材を育てるものとして、さらには生涯学習の必要性とともに取り上げられることもある。そうした議論を待つまでもなく、東京理科大学では、2021年4月に「教養教育研究院」を立ち上げ、これからの社会で活躍できる人材を育てるための、新しい教養教育が動き出している。教養教育研究院は、「正解のない課題に対しても積極的に挑むための判断力・行動力の育成」、「多様な価値観を持つ人材とコミュニケーションを取れる能力」など、理科大における教養教育の目標達成のために、教養と専門が有機的に連携し、並列した教育を展開することで、優れた専門性を補完する能力を学生に獲得させることを目指している。

3年生以降も続くくさび形教養教育、新しい教養が進行中。

市村教授は言う「単純に教養教育が4年生まで伸びたと思ってほしくはないです。10代の終わりから20代初めの学生は、すごいスピードで成長していきます。その成長段階のところで、必要なことは少しずつ違っていくはずです。そうしたことにしっかりと対応していきたいというのが、くさび形教養教育の考え方です」。くさび形教養教育はカテゴリー分けがされていて、2年生以降で取得できるカテゴリーにおいては、教養教育研究院の各教員による最先端の研究にも触れることができる、より高度な内容となっているのが特長だ。「理学や工学を学ぶ学生たちが、自分の専門分野とその他の知識や思考を合わせることで何かが起きることを期待しています。それは逆にいうと、学生自身が目標を定め、自分自身で学びをプログラミングしていける幅が広がったということだと思います」と市村教授。

人間的なスキルを磨くために欠かせない教養。

教養教育研究院では、より多彩な知識を学生たちに届けるために、知のフロンティアというセミナーを定期的に開催している。これは、学内外の専門家を招いて、学生を中心に教職員も参加できる、より自由な学びの機会となっている。これまでに、『科学技術とアート』 『翻訳のリアルと最先端』などのセミナーが開催されてきた。市村教授は言う「理科大の中にも、理学や工学以外の学修の機会が多く用意されています。それに対して、専門ばかりをやっていると良くないから、教養もあったほうがいいという話を聞くことがあります。しかし、そういう考え方で教養教育は設計されていません。その証拠に、これだけは学びなさいというような科目は決められていないのです。一人ひとりの学生が自分に必要なものを学び取っていくために、教養という学びを活用してほしいと思います」。新しい教養教育は始まったばかりだ。それでも、理学や工学の力を、これまで以上に社会に支持されるものにしたいという、前向きな思いが強く伝わってきた。

野田キャンパス教養部
市村志朗 教授

■ 主な研究内容

専門分野は、スポーツ科学、運動生理学、衛生学公衆衛生学。スポーツのゲーム分析、身体活動時の骨格筋のエネルギー代謝、人の健康増進についてなどの研究を行っている。担当科目は、健康・スポーツ科学、健康スポーツ(実技)など

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