2023.10.27
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データーサイエンスを駆使した、乳がんの研究が進行中。 

秋本教授は、これまで、がんの大本となる幹細胞についての解析に薬学研究の立場から長年取り組んできた。その中で、データサイエンスを使ったがん研究の可能性を考え始めたという。「東京理科大学には、データサインスの専門家がたくさんいて、医療への応用を考える上で最適な環境でした」と秋本教授。日本でも、がん遺伝子パネル検査が条件つきながら保険適用されるようになり、がん患者の遺伝子情報をどのように使うのかが今後の課題となっている。東京理科大学で現在進んでいるのは、乳がんと診断されてから、10~15年以上の晩期再発を予測する遺伝子を、バイオマーカーとして抽出する試みだ。秋本教授は言う「ある一定の遺伝子の発現が高い場合に10〜15年後に再発がしやすいという予測が診断時にできれば、そのリスクを軽減させる対応を準備することが可能になります。データーサイエンスの専門家との研究で、情報論手法を使うことで、バイオマーカーとなる遺伝子を1つ発見できました」。

さまざまな分野で培った人工知能の技術を医療研究の分野へ応用。

西山教授は、コンピュータネットワークを用いた人工知能・コミュニケーションの応用研究に長年取り組んできた。その一例をあげると、居眠り運転検知システムの研究や搾乳・哺乳ロボットを用いた酪農に関する研究であり、それはつまり、正確に安全に人の代わりを務める人工知能システムの開発だ。特に酪農の研究では、高速論理型の機械学習器を使用してきた。西山教授は言う「集められたデータからどういう牛がいい牛なのかを導き出す場合に、その理由を説明できないと誰も納得してくれない。論理型の機械学習器を使えば、朝早く起きて、毎回の食事を一定の速度で食べる牛が健康でいい牛だということが説明できるようになるわけです」。こうした西山教授の研究は、がんの遺伝子発現データの解析でも力を発揮することが期待されている。すなわち、医療従事者へしっかりとした助言を与えられるような研究が可能となるのである。

データサイエンスと医療、両方の知見が豊富に揃う東京理科大の研究環境。

データサイエンス医療研究部門には、理工学部と薬学部だけではなく、工学部、理学部第一部・第二部、生命医科学研究所に所属する多くの研究者が集まっている。がんゲノミクスデータサエンス医療の基盤整備を行い、社会実装することで、がんをはじめとした病気の予防と健康寿命の延伸を目的としている。さらには、国立がん研究センターとも連携して、双方の研究者が融合研究分野を組織することで、がんの治療・診断・予防に関する研究の加速化を目指している。がん患者の遺伝子変異を調べ、それに合った治療法を考えるがんゲノム医療は、日本ではまだ始まったばかりだ。そこからさらに、がんマルチオミクスデータサイエンス医療へと進んでいくことが世界中のがん研究、医療研究の大きな流れになるだろう。その発展の重要な部分を東京理科大学が担っているといっても、それは過言ではないだろう。

薬学部 生命創薬科学科
秋本和憲 教授

■ 主な研究内容

専門は、分子腫瘍科学。がん幹細胞の性質を解明する研究、がんゲノミクスデータサイエンス医療の社会実装に向けた研究などに取り組んでいる。

創域理工学部 経営システム工学科
西山裕之 教授

■ 主な研究内容

専門は、情報工学。居眠り運転検知システム、酪農トータルファーミングなど、人の代わりを務める人工知能システムの開発に取り組んでいる。

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