研究センターとは、学術分野の枠を超えた、規模の大きな研究組織のことである。ウォーターフロンティア研究センターは東京理科大学に3つある研究センターの一つで、「物質と水」、「生命と水」、「環境と水」の3グループを形成して、水研究のワンストップサービスを目指している。各研究グループには、材料・計測・理論の研究者が学部の枠を超えて集まり、学際的、個性的な研究が多数進んでいる。このように、物質と水の接点である水界面に特化した国際的コア研究拠点は、その学術的、社会的重要性にも関わらずほとんど存在していない。東京理科大学が、国内外のトップランナーと連携し、そうした性格の研究拠点を確立しようというのである。
「水そのものの研究はかなり行われてきましたが、水が材料や何かに入り込むとか、あるいは材料が水にどう作用するのかといった研究はまだ教科書にも載っていない分野です」と元祐教授。マイクロ・ナノ熱流体工学を専門とする元祐教授の研究室には、試作品のデバイス類が多く並び、肉眼では見えないような小さなスケールで水が流れている。そこでつくられているのは血液や液体成分などから、何かの物質を見つけ出すための装置だ。元祐教授は言う「現代では医療診断機器をはじめ多くの分野で各種システムの小型化が進められていて、微小スケールでの熱や流体の振る舞いの理解の重要性が高まっています」。一方、酒井准教授の専門は、水にも油にもなじみやすい性質を持つ界面活性剤のような両親媒性物質だ。「界面活性剤が活躍する分野はとても広く、朝起きてから夜寝るまで、生きている間はずっと関わりがあります」と酒井准教授。食器洗いやボディソープなどの洗剤、化粧品、食品、さらには機械の潤滑油でも使われているそうだ。酒井准教授は、界面活性剤のなかでも少ない量で効果を発揮するジェミニ型界面活性剤の研究に取り組んでいる。また、界面活性剤にアルコールや水を足してつくるαゲルや高濃度のエタノールを含む水溶液でつくった泡など、健康で衛生的な環境をつくったり、暮らしを豊かにするための研究を続けている。
元祐教授の研究室では、実施されている研究のほとんどが、国や大学、研究機関、企業との共同研究である。また、酒井准教授の研究室は、生活に密着した学問領域であるため民間企業との共同研究を活発に行っている。元祐教授は言う「自分たちだけではできる範囲に限界があります。力を借りたいという時に誰が何をできるのか知っていることが重要で、そういう意味で研究センターの活動は貴重です」。そうした限界を超えた研究が可能になることで、例えば持っているだけで人の健康状態がわかるようなバイオセンサーデバイスの開発も夢ではないそうだ。水と一口に言ってもとても奥深い。他にもたくさんの興味深い研究が進行中なのである。
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主な研究内容
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主な研究内容
教育であり、研究であり、学内外が交流する活動でもある。
新しい領域を創造するための創域の芽プロジェクト。
『数理科学科ダブルラボの発展』
創域理工学部 数理科学科 牛島 健夫 教授
創域理工学部 数理科学科 青木 宏樹 教授
創域理工学部 情報計算科学科 宮本 暢子 教授
『機電材料系学科・専攻を超えた学生間による企業研究』
創域理工学部 電気電子情報工学科
永田 肇 教授
『野田キャンパス理窓会記念自然公園における環境教育』
創域理工学部 経営システム工学科
伊髙 静 講師
2024年06月10日
植物や生物と環境との関係を解明し
生態系や生物多様性を守っていく。
総合研究院 生物環境イノベーション研究部門
先進工学部 生命システム工学科
宮川信一准教授
総合研究院 生物環境イノベーション研究部門
理工学部 応用生物科学科
坂本卓也講師
2023年03月27日