準結晶とは、結晶とも非晶質(アモルファス)とも異なる、第三の固体物質というべき状態です。 1984年にアルミニウム-マンガン合金で発見された準結晶は、今では100を超える合金系で見いだされ、さらに、高分子、コロイド、メソ多孔体シリカ、酸化物など、合金を超えた多様な系でも存在することが明らかになりつつあります。ふつうの結晶は原子が周期的に並んだ構造をもちます。ところが、準結晶では、原子は周期的に並んでおらず、準周期性と呼ばれる特異な規則性に従って並んでいます。準結晶での原子の並びは、高次元結晶学によりエレガントに記述されます。高次元結晶学では、3次元空間で周期性をもたない原子の並びを、「補空間」と呼ばれる空間を加えた高次元空間を用いて記述します。このように補空間を含む高次元空間で統一的に記述される物質群を「ハイパーマテリアル」と定義します。その一つの特徴として、通常の結晶と異なり極めて高い対称性をもつことができます。
世の中にあるもので最も対称性が高いのは球です。正20面体準結晶とよばれる準結晶は、球に最も近い対称性を誇る物質です。このため現在、この高い対称性を最大限に生かした様々な応用が考えられており、究極の軟磁性体、高性能熱電材料、高Tc超伝導体、熱整流材料など、その可能性は枚挙にいとまがありません。しかし、磁性体を例にとると、これまで誰も準結晶の磁性体を創ることに成功しておりませんでした。我々の研究室では2021年、準結晶の発見後約40年にして、世界で初めて強磁性準結晶を発見しました。準結晶が強磁性体になること自体驚きですが、軟磁気特性をはじめ、準結晶に秘められた特異な性質を解明すべく、ここにきて研究が急展開しています。ハイパーマテリアルには、高対称性以外にも、高次元性、準周期性、フェイゾン自由度という通常の物質では考えられない際立った特徴があります。今後どんな特異な性質が発見されるのか、そしてどのような新しい応用につながるのか、胸が躍ります。
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主な研究内容
重要な生体情報をセンシングすることで、
健康寿命を伸ばし、病気にならない社会を目指す。
創域理工学部 電気電子情報工学科
山本隆彦 准教授
先進工学部 機能デザイン工学科
梅澤雅和 准教授
2023年10月27日