2023.03.27
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抗体が体の中でいかにしてつくられるのかを研究。

抗体は病気から体を守るための必須の分子です。人類は抗体の産生を人為的にコントロールすること、つまりワクチンという手法を手に入れることで様々な感染症を克服してきました。一方で、抗体分子が自分の体に対してつくられると自己免疫疾患の原因となり、また、花粉など、もともと病原性のない物質に対して抗体がつくられるとアレルギー疾患の原因となってしまいます。つまり、抗体を深く理解することは、これら感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患の治療法の開発にとって非常に重要です。抗体は、B細胞がつくり出す分子ですが、B細胞が抗体をつくるためにはヘルパーT細胞の助けが必要です。ヘルパーT細胞の中でも濾胞性ヘルパーT細胞、TFHとよばれる細胞が中心的な役割を担っています。T細胞とB細胞はリンパ組織の中で別々の領域に存在していますが、抗原刺激を受けると、その一部はB細胞領域に移動します。このB細胞領域に移動する能力をもつヘルパーT細胞をTFH細胞とよんでいます。TFH細胞はB細胞と直接相互作用することで、B細胞に高品質の抗体をつくらせます。

B細胞が抗体をつくるために必要なTFH細胞の働きを突き止める。

私たちの研究は、このTFH細胞の制御機構の解明が中心的なテーマです。TFH細胞の制御機構を理解するために、研究室では様々な遺伝子改変マウスを作製して解析を行っています。これまでに、特異的にTFH細胞の遺伝子変異を誘導できるマウスやTFH細胞を体内から消去できるマウス、さらには自己抗体やアレルギー疾患の原因となるIgEを誘導できるマウスなどを作製し、研究を進めてきました。 TFH細胞の制御機構を明らかにすることができれば、人為的に抗体の産生を増強することが可能になり、それは新たなワクチンの開発につながると考えられます。また、TFH細胞を人為的に抑制することができれば、関節リウマチやバセドウ病、重症筋無力症などをはじめとする抗体が原因となる自己免疫疾患や、アトピー性皮膚炎、花粉症などの様々なアレルギー疾患の治療薬への応用が可能になります。

薬学部 生命創薬科学科
原田陽介准教授

■ 主な研究内容

専攻分野は、分子免疫学、免疫細胞学。 T細胞活性化機構の解明、免疫記憶形成機構の解明、免疫賦活・抑制分子の開発などに取り組んでいる。

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