宇宙に注目が集まっている。もちろん宇宙開発は今に始まったことではない。しかし、5年前と比べると宇宙で暮らすことを真剣に考えなければいけないという機運が急速に高まっているというのだ。そうした時代の要請を受けて、2021年4月、総合研究院にスペースシステム創造研究センターが誕生した。「アメリカは、2025年には月面に再び人を立たせると言っています。月周回有人拠点(Gateway)プロジェクトも始まっています。日本もそうした計画に参加を表明しています」と木村教授。東京理科大学には、宇宙に持って行くと役に立つ技術を研究している人が多くいる。そうした技術を実際に宇宙へつなげるための活動が始まったのである。
宇宙で暮らすために必要なものは、きれいな空気や水、食べ物、健康管理、エネルギー、挙げていけばきりはないが、どの項目についても東京理科大学で盛んに行われている研究である。ところが、そう簡単にはいかないようだ。勝又教授は光触媒を使って水や空気中の有害物質を分解、除去する研究に取り組んできた。その技術を利用して宇宙空間用の次世代空気再生装置をつくっている。言わば、光触媒の宇宙システム化に取り組んでいると言っていいだろう。「要求される条件や仕様は厳しいものがあります。地上では許されても宇宙では許されない材料とか化学組成があるわけです。コンパクトで軽いものにする必要がありますし、電力の効率も高めなくてはならないなど、解決すべき課題が山積みです」と勝又教授。このように宇宙を目指して技術を先鋭化していくことは、翻って地上の技術としてもより良いものになっていくことが考えられる。スペースシステム創造研究センターは、宇宙も地上も同時に幸せにしていくことをコンセプトとしているそうだ。
宇宙を目指すことのもう一つの利点は、持続可能性の実証の場となるということである。木村教授は言う「地上よりもより閉鎖的な環境で人が暮らすということを実現するためには、サステナブルなシステムでなければ絶対にいけないはずです。逆に言うと、宇宙でサステナブルなシステムを実現できるのであれば、地上ではより簡単にできるはずだと思っています」。一方、勝又教授は、宇宙空間での空気や水の浄化に加えて、海洋プラスチックごみの問題にも取り組んでいる。「使用時は十分な耐久性を持っていて、海に流れ出した時などは強い太陽光の下で光スイッチが入り生分解したり、食べても体内で害にならないようなプラスチックをつくろうとしています。これは宇宙でも使えるものになると思っています。月面でプラスチックごみ問題などを起こしたくはないですから」と勝又教授。超高度なリサイクル、あるいは環境の維持ができないと宇宙では暮らせない。地球の未来も見つめながら、宇宙での暮らしの実現が一歩一歩進んでいるようである。
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主な研究内容
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主な研究内容
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主な研究内容
総合研究院 スペースシステム創造研究センター
創域理工学部 電気電子情報工学科
木村真一教授
総合研究院 スペースシステム創造研究センター
創域理工学部 先端化学科
酒井秀樹教授
総合研究院 スペースシステム創造研究センター
先進工学部 マテリアル創成工学科
勝又健一教授
2023年04月07日
グリーン水素の製造、利用技術を確立し、
CO2を出さない社会を目指す。
総合研究院 カーボンバリュー研究拠点
理学部第一部 応用化学科
工藤昭彦教授
総合研究院 カーボンバリュー研究拠点
工学部 工業化学科
田中優実准教授
2023年03月27日