2022.12.26
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家族、教育、市場に注目し、その中でジェンダーがどのようにつくられているのかを考える

一般教養科目の「ジェンダー論」の講義を担当しています。社会を構成するシステムのうち、特に家族、教育、市場に注目し、それぞれの中でジェンダー(性別をめぐる現象のうち社会的なもの)がどのようにつくられているのか、それぞれのシステムの中でつくられたジェンダーがどのように関連しているのかを考えています。また、これらの公的なシステムだけでなく、恋愛や性行動などの日常生活の中でジェンダーがどのように作用しているのかについても扱っています。講義では、各自の思い込みを取り払うために、数値データや各種資料を提示しながら社会の現状を把握することを意識しています。たとえば教育について、一見、男女平等に見える学校においても、ジェンダー役割がつくられており、そのことが女子の理系嫌いや高等教育進学率の男女間格差につながっていることを様々なデータをもとに検証します。市場については、男女間の賃金格差が生じるのはなぜかについて、企業の側の女性に対するステレオタイプや必ずしも悪意のない差別、労働者の側の性別役割分業などに着目して考察します。また、自分とは背景や価値観が異なる人の立場からは社会がどう見えているのかに想像力を働かせてもらうために、受講生同士のディスカッションを重視しています。

自分とは異なる現実を生きている他者を理解する姿勢は、将来、専門職としての力量になる

性別をめぐって、なにかの問題が生じたときに、それがどんなに個人的な問題に見えようとも、社会的な構造との関係において捉える力、「社会学的想像力」を身につけることが大切です。それによって、いたずらに自分を責めたり、自己責任論によって他者を非難して終わることは避けられるのではないかと思います。特に男子学生には、この社会でマジョリティ集団に属することによって得ている優位性や特権に気づき、それらを成り立たせている社会的な構造への理解を深めてほしいです。ジェンダー平等は、マジョリティの側が変わらなければ実現できないと考えるからです。見えにくく、ないことにされがちな問題に気づく人が増えれば、人々は解決に向けて行動し、社会は変わるのではないかと思います。世の中の専門分化が進みすぎると、自分の専門分野で当然視されていることについては疑わなくなってしまいます。しかし、科学や技術が対象とする一般の人々の生活や思いは、専門分化された視点や方法だけでは把握することはできません。そのために、専門知それ自体を相対化できる力や自分とは異なる現実を生きている他者を理解しようとする姿勢は、学生が将来、様々な場所で科学者や技術者としての力量を発揮する上で役に立つはずです。

教養教育研究院 葛飾キャンパス教養部
西倉 実季 准教授

■ 主な担当・研究内容

担当科目は、 「社会学」、「現代社会学」、 「ジェンダー論」、 「教養演習」など。専門分野は、社会学、 ジェンダー論。外見を理由にした差別や美的労働についての研究、ライフストーリー研究などを行っている

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