2019.10.30
続きを読む

水の学理を求めて、物質・材料表面における水の構造と動きを研究

私たちの生命に欠かすことのできない水。命を維持するために常に身近にあるのに、水はまだまだ不思議な存在。
水は一見、流れる連続した物体のように見えますが、水素元素2つと酸素元素1つから構成される水分子の集まりです。そこまでは分かっていても、いまだにナノメートル(1mの10億分の1)の水の構造や動きは完全に把握できていません。

なぜなら、水の構造や動きは触れる物質や材料によって大きく変わってしまうから。研究が難しい分野だけに、今、多彩に姿を変化させる水の構造や動きを統一的に理解できる研究成果が求められています。

理科大で、水の不思議に迫っているのは、理学部第一部 化学科の由井研究室。さらに、理学部第一部 物理学科、工学部 教養・機械工学科、理工学部 先端化学科・機械工学科など、多彩な学部・学科から数多くの研究者たちが集まり、共同で「物質・材料表面における水の構造と動きの学理」を解明するという難題にチャレンジしています。

医学の発展と地球環境の保護につながる材料表面における水の研究

材料表面における水の構造と動きを完全に理解し、制御できるとしたら、さまざまなことが実現できるようになる、と由井教授は語ります。
たとえば、短時間で少量の水や血液を検査できる機械を作れるようになります。今、宇宙では飲み水の水質検査に2日かかっていますが、この時間が一気に短くなります。また、耐久性に優れた人工関節、生体に適合する再生医療材料なども開発されるようになるでしょう。

さらに、材料表面における水の動きが解明され、海水と船体との摩擦抵抗を減らす素材が開発されれば、より少ない燃料で船を航行できるようになるでしょう。

材料表面における水の構造と動きの秘密を解き明かすことは、「医療・生命科学」分野に貢献するだけではなく、「環境・エネルギー」分野にも大きな貢献を果たすのです。

現在、由井研究室では、最新の光レーザーなど新しい計測手法や装置を開発し、物質・材料表面における水分子の化学反応、集団構造、動きなどを追跡しています。他分野の研究者たちと力を合わせて、生命科学、環境科学、材料科学などへの貢献を目指しながら、水の秘密を解き明かす研究に日々取り組んでいます。

理学部第一部 化学科 
由井宏治教授

■ 主な研究内容

研究分野は、水、レーザー分光学、界面・コロイド化学、溶液化学。他分野の研究者と共に水のメカニズムの解明に取り組んでいる。

おすすめの取り組み