※内容は「東京理科大学報」 vol.232 掲載時のものです。

南極の氷河下で、宇宙から降り注ぐ素粒子を観測。宇宙ニュートリノの起源や高エネルギー現象の謎に迫る。

未知の素粒子・宇宙ニュートリノの研究に奮励
千葉大学
ハドロン宇宙国際研究センター 教授

石原 安野さん

千葉大学
ハドロン宇宙国際研究センター 教授
東京理科大学理学部第二部物理学科卒業。2004年テキサス大学大学院 自然科学研究科博士課程修了。その後テキサス大学やウィスコンシン大学の研究員を経て2006年千葉大学へ。2005年より国際共同研究「IceCube」に参加。2019年より、千葉大学グローバルプロミネント研究基幹教授、2022年度組織改編により現職。国際高等研究機関/ハドロン宇宙国際研究センター教授。

「疲れていても休暇中でも、少しでいいから毎日物理のことを必ず考えること。自分の直感を大切に努力すること。」

今この瞬間にも、宇宙の遥か彼方から絶えず降り注ぎ、私たちの体や地球をすり抜けている素粒子がある。理科大の卒業生である石原さんは、この未知の素粒子・宇宙ニュートリノの研究に奮励している。南極にある世界最大規模の国際共同ニュートリノ観測所アイスキューブでは、地球に飛来したニュートリノが、氷河や水と衝突した際、稀に発生させる光を捉えることでニュートリノの観測をしているという。南極点付近の厚い氷河に掘られた、深さ2.5km の86本の穴には、それぞれ60個ずつ合計で5160個の光検出器が設置され、捉えた光の情報を発信している。石原さんは、観測所建設の初期からこのプロジェクトに参加。2012年には、可視光の1000兆倍もの超高エネルギーを持つニュートリノを世界で初めて観測することに成功。さらに2017年には、所属する千葉大学チームで、ニュートリノの放射源である天体を発見。これらの功績が認められ、数々の賞を受賞している。

元々は物理学者になるつもりはなかったという石原さん。高校生の頃、物理の面白さに触れ、物理をとことん学び研究に没頭できる環境を求めて理科大に進学したという。「二部生として入学しましたが、興味の赴くままに聴講した理学部第一部の鈴木公教授の量子力学の授業に魅了され、そのまま4年次には、鈴木研究室に所属しました」。その後は、鈴木教授の勧めもあり、研究の場を海外へと移したという。「疲れていても休暇中でも、少しでいいから毎日物理のことを必ず考えること。自分の直感を大切に努力すること。物理以外のところにも自分の軸を持つことなど、鈴木教授から学んだことはとても多く、私自身、研究者としての姿勢や人としての在り方という点に大きく影響しています」。幼い頃、本で読んだキュリー夫人のストイックさに憧れを抱いたという石原さんは、現在、アイスキューブのアップグレード計画に伴い、次世代の新しい光検出器の開発や耐久実験に励んでいる。その計り知れない物理への探究心で、謎だらけの宇宙の極限エネルギーを今後も明らかにしてくれるに違いない。

千葉大学が開発した次世代観測器「高性能新型光検出器D-Egg」。来年、数百台が南極に輸送予定。