現在、東急電鉄で、渋谷ヒカリエ、二子玉川ライズといった大型複合ビルを運営するなど「街の魅力づくり」を手がける渋谷さん。
現在の仕事の“原点”は、中学時代にあるという。
「東急田園都市線の『あざみ野』駅が開業する直前に、家族があざみ野へ引っ越しました。その後、駅の開業を契機に、街が変貌していくさまを目の当たりにして、街づくりの魅力にとりつかれました」
当時から、大学では建築を学ぶと決めていた渋谷さんが、東京理科大学を選んだ理由を聞くと「まじめな校風が自分の性格に合っていたから」と笑う。入学当初は設計・施工分野のスペシャリストを志していたが、理科大で学ぶうち、大きな進路変更を迫られる。
「建築学科は月に1度、設計の課題発表会があるんです。グループごとに図面と模型を制作して発表するのですが、設計やデザインに関する同級生のレベルの高さを見て、“自分は設計・施工分野では勝負できない”と痛感させられました。都市開発の分野で仕事をすると決意したのはこの頃です」
その後、都市計画家・日笠端教授の研究室で学んでいる時、東急電鉄の八王子・二子玉川再開発の担当部長を紹介される。
「東急電鉄は、鉄道会社の中でも“街づくり”の色合いが濃い会社。私は中学時代から、“将来は、何が何でも東急で仕事をする”と固く決意していましたから、運命のようなものを感じました。日笠先生からは多くのことを学びましたが、この出会いがなければ、今の私はなかったかもしれませんね」

入社後は、グランベリーモールの建築担当、たまプラーザテラス・二子玉川ライズ二期計画のプロジェクトマネージャーなど、開発と運営の両面から、街づくりに取り組んできた。
「開発に関わった地域の人たちが、自分の住む街に対して誇りや愛着をもってくれていると感じられる瞬間は、この仕事の醍醐味だと思います。作り手の思いを超えて街が成熟していく様子を見るのはうれしいですね」
最後に、東京理科大学で学ぶ学生たちにメッセージをお願いした。
「自分の進むべき道を、できるだけ早い時期に見定めてほしい。大学で学ぶ内容は、仕事に必要な知識のごく一部に過ぎない。社会に出てからも不断にバージョンアップしていく必要があるんです。自分はどんな分野で社会に貢献したいのか? その問いに対する答えを早く見付けてほしいですね」