研究部門・研究センター等の紹介

キラリティー研究センター

センター長  理学部第一部 応用化学科 教授 椎名 勇  
研究内容 キラリティーの起源、増幅および不斉合成に関する研究 
目的 生体のアミノ酸などはキラルである。キラル化合物の不斉合成法の開発、分子キラリティーの起源を解明する 
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【研究成果ハイライト2015】

私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

このセンターは私立大学戦略的研究基盤形成支援事業を実施しています。

はじめに

ある物体を鏡に映したとき,左右の掌のように元のものと重ね合わせることができない場合,これらをキラル(不斉)であると言います。L-アミノ酸やD-糖類にみられるように生体関連化合物には,作用の異なる2つの鏡像異性体のうち,一方のみが存在することが多いことが知られています。

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従って,望む一方の鏡像異性体を合成することができる不斉合成の研究が重要な研究課題の一つとなっています。また,生体関連化合物の不斉の起源すなわち不斉が生じ増幅した過程の解明は,サイエンスの未解決問題のひとつとされています。またキラリティーを有する分子の集合体は興味ある物性を示すことが明らかになっています。最近の本学の不斉自己触媒反応による不斉の起源の解明や,不斉有機触媒の創製に関する不斉分子化学的研究が大いに関心を集めています。さらに,これまで本学ではジアスレテオ選択的およびエナンチオ選択的不斉合成において着実に有用な成果を挙げてきました。

目的

キラリティー研究センターは,本学のキラル分子化学の研究者がキラリティーの概念のもとに結集し,不斉の起源および不斉の増幅過程の解明,不斉錯体および不斉有機触媒による有用なキラル化合物の不斉合成法の開拓を目的とし,研究を行います。もってキラルサイエンス分野で本センターが独創性において世界のトップレベルに位置付けられる成果を挙げることも目的としております。

特色

本センターを構成する教員のキラリティー研究のレベルは,質,量ともに世界的にも高いことが特色の一つであります。キラル分子化学の研究者が集結した研究グループは世界的にきわめてユニークで特色的であります。また不斉の起源の解明はサイエンスの未解決問題の一つとされております。不斉自己触媒反応を活用することにより,その解決に向けて大きな成果が挙がることが期待できます。不斉有機触媒や錯体触媒を用いる不斉合成手法の開拓は,医薬品等の不斉合成にも応用できる環境に配慮した手法を提供することが期待できます。これらの研究を通して,キラリティーに関する一層深遠な自然観の確立に貢献し,キラル物質およびその集合体の不斉合成に供する手法の提供ができる意義があると言えます。

キラリティーに関する研究は,世界的に多くの研究者が関心を寄せ,競争が激しい分野ですが,本学教員のキラリティー研究は,きわめて独創的かつ優れており,質,量ともに世界でもトップレベルに位置付けられ,これまで以下の賞を受賞しております。

椎名勇:第30回日本化学会学術賞「高選択的な脱水縮合反応の開発ならびに薬理活性化合物の不斉合成」(24年度)

井上学術賞「迅速かつ高選択的な脱水縮合反応の開発ならびに薬理活性化合物の合成研究」(26年度) 、市村学術賞・功績賞「高効率な医薬品製造を可能にした革新的脱水縮合反応の開発」(26年度) 、

文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)「医薬品と新素材の高効率生産を可能にした脱水縮合反応の開発」(27年度)

硤合憲三:第63回日本化学会賞「キラル有機化合物の不斉の起源とホモキラリティーの研究」(22年度),文部科学大臣表彰科学技術賞研究部門「受賞不斉自己触媒反応の発見と不斉の起源解明の研究」(19年度),紫綬褒章(24年度)

林雄二郎:第28回日本化学会学術賞「実用的不斉有機触媒反応の開発および独創的天然有機化合物合成」(22年度),有機合成化学協会第一三共・創薬有機化学賞「実用的不斉有機触媒反応の開発および独創的天然有機化合物合成」(20年度),井上学術賞(23年度)

佐藤毅:日本薬学会学術貢献賞「マグネシウムカルベノイドならびに関連反応活性種の化学の開拓」(21年度)、東京都功労者表彰(25年度)

川崎常臣:第59回日本化学会進歩賞「炭素同位体キラル化合物による不斉誘導現象の発見と超高感度不斉認識」(21年度),文部科学大臣表彰若手科学者賞「炭素同位体不斉誘起現象の発見と高感度不斉認識の研究」(22年度),Banyu Chemist Award (23年度)

斎藤慎一:HGCS Japan Award of Excellence 2014 (第12回ホスト・ゲスト化学シンポジウム実行委員会)(26年度)

これらの分子化学の研究者が集合してキラリティーに関して主力を注ぐ研究センターは世界的にも殆どありません。本センターは,キラリティーに関してきわめて先導的な研究成果を挙げ,キラル化合物の不斉合成法の提供のみならず,生体関連化合物のキラリティーの起源に関する要因を明らかにすることにより,サイエンスとして未解決問題の解決の糸口を与える可能性が大きいと期待されています。

研究内容

A:不斉自己触媒反応による不斉起源の解明:キラル無機物質や動的不斉要因を元に鏡像体過剰率が向上する不斉自己触媒反応と組み合わせ,高光学純度キラル化合物を得ることにより,不斉起源を解明します。

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B:動力学的分割による不斉合成:医薬品中間体の動力学的分割による不斉合成法を開発する。

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C:キラルな化合物の合成:これまで優れた合成法のない, 不斉反応の開発を行います。また,優れた不斉触媒を開発し,大量合成可能であり,環境に優しいキラルな化合物 の合成法を開発します。さらにキラルな高分子の合成を行います。

C-1:不斉反応の開発:これまで優れた合成法のない不斉4級炭素の構築を目指し,不斉アルドール反応などの検討を行います。不斉ヘテロデイールス-アルダー反応,不斉エポキシ化反応などにキラル触媒を適用することにより,キラル素子の合成も行います。さらに光学活性な出発物質として容易に合成可能なキラルなスルホキシド化合物に着目し,様々な有用なキラル中間体を合成します。

C-2:キラルな触媒の開発:触媒量の不斉源から大量のキラルな化合物を合成する不斉触媒反応は,光学活性体の優れた合成方法の一つであります。そのためには優れた触媒の開発が必須とされています。本センターでは,面不斉や螺旋不斉などを有する遷移金属触媒を開発し,高分子合成反応(重合反応)に適用することにより,生成ポリマーの主鎖一次構造の制御および光学活性ポリマーの合成を行います。さらにアミノ酸由来の有機不斉触媒を設計し,大量合成可能な実用的不斉合成法の開発を行います。

今後の展開

メンバーのこれまでの研究成果をもとに、キラリティーに関連するレベルが高い研究を推進していきます。

センター長からのコメント

我々人間を含め生体は3次元の世界で活動しています。3次元世界では[x,y,z]座標の軌跡で表される構造に対して[x,-y,z]座標の軌跡で表される構造、すなわち鏡像が存在しますが、生体を構成する分子のほとんどはそれらの内の一方から成っています。キラリティー研究センターでは、1)生体構成分子がなぜ片方に偏った状態で存在することになったのか、また2)生体に作用する片方の鏡像分子を効率良く合成するためにはどのような手段があるのか、を主な課題として検討を進めて行きたいと思います。

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