Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview09
ひたむきにがんばり、
目の前のチャンスは迷わずつかむ
コツコツやれば必ず契機は訪れる
安元 加奈未 講師
東京理科大学 薬学部 薬学科 
広島出身。高知大学理学部化学科卒業。2004年徳島大学薬学研究科修士課程修了。2009年同博士課程修了。2005年より徳島文理大学 香川薬学部 助手となり、博士課程と両立。2020年より現職。2007年に結婚し現在子育てと仕事を両立している。

先生の現在の研究について教えてください。

リーシュマニア症という、昆虫が媒介する熱帯感染症の治療薬のシーズ(種)となる物質の探索研究を行っています。リーシュマニア症は日本にはない病気であるため、あまり知られていませんが、世界90か国に約1200万人の患者がいるといわれています。深刻な病気であるにもかかわらず、明確な治療薬がなく、また貧困地域に発生することが多いので、製薬会社は創薬にあまり積極的ではありません。そのため「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Disease;NTDs)」と呼ばれています。その感染症の原虫を殺す成分を、植物や海洋生物などの天然資源から見つけようという研究です。

先生の現在にいたるまでの経緯を教えてください。

子どもの頃、調理中に洗剤によって野菜の煮汁の色が変化することを体験してから、化学に興味を持ち、高校では化学の放課後クラブにも入っていました。大学は化学が学べるところに行こうと思い、高知大学理学部化学科に進学しました。

修士課程、博士課程に進んだきっかけは何だったのでしょうか。

私はごく普通の学生でしたが、転機となったのは、3年生の夏休みに受講した集中講義です。他大学の先生による3日間の集中講義だったのですが、この時に来てくださったのが天然物化学分野で世界的に有名な徳島大学の先生でした。海洋生物や海藻の毒成分、薬になった成分に関する非常に興味深い講義でした。内容もさることながら、研究と同じくらい教育も大切、と男女分け隔て無く熱心な先生のお人柄にも強くひかれました。「研究したいのならおいで」と言ってくださったので、これは行くしかない!と。1年間アルバイトで学費を貯めて、徳島大学の大学院に進学しました。

修士課程では海洋深層水で培養した海藻の成分について研究していました。2年間では足りず、もう少し天然物化学の研究を続けたいという気持ちから博士課程に進学しました。当時は就職難でしたので、博士課程修了後の就職活動に不安もありましたが、研究を続けたいという気持ちの方が強かったですね。

博士課程1年の時に、徳島文理大学が香川県に薬学部を新設することになり、助手を探しているという情報を先生からいただきました。職を得る機会があれば迷わず飛び込めという先生からの助言で社会人博士課程に切り替え、助手をしながら学位を取得しました。

当時の上司であった徳島文理大学香川薬学部の先生は、女性の研究者に対して大変理解がありました。ご自身も仕事と家庭との両立で苦労されているので、次の世代が負担を感じないよう配慮をしてくれる慈愛に満ちた先生でした。また、当時の准教授であった先生にも公私ともに助けて頂きました。振り返ってみると、私は非常に恩師に恵まれていたと思います。

家庭と研究の両立はどのようにされているのでしょうか。

夫も大学教員ですので、子どもができるまでは別々に他県で暮らしていました。子供が生まれたあとの育児休暇中は、夫の家で子育てをしていましたが、復帰後は別居に戻りました。月に1~2度夫が通う、いわゆるワンオペ育児でした。仕事との両立は大変でしたが、子どものかわいさに救われて何とか続けられました。一人では対処できないときは母に手伝いに来てもらいました。

成長に伴って子どもの物心がつくようになり、やはり3人で暮らしたいということで、関東圏の大学を探しました。ご縁あって東京理科大学に採用いただき、2020年からようやく家族揃って住めるようになりました。

理科大に来てよかったことは何ですか?

薬学部は専任教員が研究室を主催しているので、大変ですが自分の努力次第で学生さんとともに研究を育てていける環境なのがいいですね。また、研究費を獲得してくることも教員の仕事の1つですが、申請書の書き方など、丁寧にサポートしてくれる体制が整っていることも大変助かっています。

今後のキャリアプランはどのようにお考えですか?

具体的なキャリアプランはあまり考えていません。ベストを尽くしていれば道は拓けると思っています。今後も、リーシュマニア症の研究を通して、SDGsのゴールの一つである「すべての人に健康と福祉を」に貢献するべく研究にまい進していきたいですね。

これから研究者を目指す女性たちにアドバイスをお願いします。

研究職は、勤務時間外もずっと研究のことを考えているので、オンオフがはっきりしていない部分もありますが、その反面、ある程度自分の采配で仕事ができるので、子育てとの両立がしやすいのは利点です。

大学教員のポストは、なかなか空きがないのが現状です。何か話があれば、迷わず飛びつくことですね。そのためには、常日頃からひたむきに研究に取り組み、学ぶ姿勢が必要です。コツコツがんばっていれば、その後行き詰まっても絶対に誰かが手を差し伸べてくれますし、ヒントになる出来事が見つかると思います。

また、大学教員をはじめ研究者にとって、研究成果は最も重要なものの一つですが、そこには人と人との関わりも結びついています。だから、周囲の人、そしてその人たちに繋がるものすべてに敬意を払い、良い関係性を作っておくことが大事です。これらはすべて私が恩師から教えられてきたことですが、その言葉を皆さんにも贈りたいと思います。

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