Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview10
やりたいことを好きなだけやれることが
研究職の一番の魅力
中 裕美子 准教授
東京理科大学 理学部第二部化学科
東京理科大学理学部第一部応用化学科卒業。東京工業大学総合理工学研究科化学環境学専攻修士課程・博士課程修了。2011年より東京理科大学の助教、2015年より講師、2021年より現職。助教に着任する直前に研究者の夫と結婚し、現在は小学3年生の子育てと仕事を両立中。

 

先生の簡単なご経歴から教えてください。

2006年に、東京理科大学理学部第一部応用化学科を卒業。学部4年生の時から外部研修生として東京工業大学の総合理工学研究科化学環境学専攻へ。その後、同研究科の修士課程、博士課程を修了。2011年から東京理科大学の助教に。2015年から講師となり自分の研究室を持つことができました。2021年に准教授となり現在に至ります。

先生の研究内容について教えてください。

高分子化学、液晶、光化学を軸として、機能性高分子材料の研究を行っています。中でも私がメインターゲットとしているのは液晶です。液晶は、固体と液体の中間状態で、電圧を加えると分子の並び方が変わる性質があります。液晶ディスプレイに使われているので知っている方も多いと思います。最近、私の研究室では、光応答性をもっているビオロゲンという分子に着目した基礎的な研究をおこなっています。イオン性棒状分子で、目的の液晶相を発現させるための分子構造の探索です。

研究のやりがいはどのようなところにありますか?

予想どおりにいかないことですね。研究成果を出すためには想定どおりの結果が出たほうがいいのかもしれませんが、予想外の結果が出た時のほうが面白い。学生と研究していると、思わぬことを質問されて、そこから新たな気づきが生まれることもある。それが学生と研究する楽しさですね。

先生が研究者の道に進まれた経緯を教えていただけますか?

学部3年生の頃は、友達がみんな大学院に行くから私も行こう、くらいの軽い気持ちで大学院に進みました。修士2年のときに就活し、内定ももらっていたのですが、8月に急遽、博士課程に進学することを決めました。決断するまではとても悩みましたね。企業から内定をもらったときに「ここで定年まで働くよりも、もっと何かに挑戦をしたい」と思いました。女性で博士課程に進む人は少なかったですし、その後の人生も不安定でどうなるかわからない。私にとって博士課程は人生を賭けた大きな挑戦でした。お世話になっていた東工大の先生の「大学の研究職は、企業の研究職と違って、自分のやりたいことを好きなだけできる仕事だよ」という一言が決め手になり、ようやく決心できました。

研究者としてどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

博士課程後に、次の職が決まらなければポスドクとして海外留学することも検討していましたが、東京理科大学理学部第二部化学科の佐々木健夫教授に、助教として採ってもらえました。助教後、幸運なことに講師に昇格させていただき自分の研究室を持つことができました。その後、准教授となり現在に至ります。振り返ってみれば運がよかったのかもしれませんが、特に学生時代は、男性には絶対負けないようにと、人一倍努力はしていたと思います。

ワーク・ライフ・バランスはどうされていますか?

助教として着任したときには結婚していて、助教の3年目に出産。子どもが産まれて一カ月で夫の単身赴任が始まりました。私は二部(夜間部)の授業がありましたので、子どもを夜間保育園に預けるか、神奈川県の実家を頼るか迷った末、実家に頼ることを選択。子どもと実家に身を寄せ、私は片道二時間半かけて大学に通っています。子どもが急に熱を出しても実家に頼ることができたのは大変心強かったですね。また、学部の先生方もとても協力的で、「大変な時は子どもを連れてくれば? 面倒を見てあげるよ」と言ってくださり、実際にはお願いしないまでも、精神的にとても楽になりました。

仕事と子育ての両立で意識しているのは「切り替え」ですね。子どもには母親の存在は大事だと思っていますので、どんなにたくさん仕事を抱えていても、家に帰ったら育児モードに切り替え、子どもにきちんと向き合うことを心掛けています。

今後の研究者としての目標を教えてください。

東京理科大学は、研究者にとって素晴らしい環境ですので、今後もこの環境で研究を続けていきたいです。私がメインターゲットとしている液晶は、非常に複雑な物質なので、まだまだ研究の余地があり研究者にとっては面白い分野です。産業界では液晶テレビに続く次の応用が探索されていますが、すぐに製品化する研究というよりは、理学的なアプローチを今後も続けていきたいですね。

今後研究者を目指す女性たちへの助言があればお願いします。

研究者は、自分の好きなことを追求していくことができる素晴らしい仕事です。しかし一方、アカデミックな世界でポジションを得ていくことは、女性だけでなく男性にとっても、とても大変です。女性の場合は出産によるブランクがあるのでさらに難しい。私も産休・育休の10カ月間はとても焦りました。でも、そこで辞めないことが何より大事だと思います。ものすごくインパクトのある成果は上げられなくても、こつこつと研究し、きっちり成果を出し続けていれば誰かが見ていてくれます。

今、私の研究室は女性が6割くらいです。女性で博士課程に進む人はまだまだ少ないですが、今後はもっと増えると嬉しいですね。

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