Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview02
偶然の出会いをポジティブに受け止めて
キャリアを開いていけばいい
渡邉 万里子 講師
東京理科大学 経営学部経営学科
2004年慶應義塾大学経済学部卒業後、企業勤務を経て2009年に同大学院経営管理研究科よりMBA取得。2015年に同大学院経営管理研究科より博士号(経営学)を取得。日本学術振興会特別研究員(DC1)、福島大学 経済経営学類准教授を経て、2017年より現職。

先生の現在の研究内容を教えてください。

専門は国際経営です。最近取り組んでいるのは、個人や組織の創造性が発揮される環境に着目した研究です。たとえば起業家やスタートアップ企業が集まるコミュニティが近年増えていますが、そこでの出会いから様々なビジネスが生まれています。米国のシリコンバレーがよく知られていますが、日本でも同じような環境ができるのか。また、イノベーションが起こりやすいコミュニティの条件とは何か、などを研究しています。

今までどのようなキャリアを歩んできましたか?

私が学生の頃は、大企業の倒産が相次ぐなど先行きが不透明な時代でした。でも、やみくもに不安がるのではなく、知識やデータをもとに論理的に世の中を見られるスキルを身につけたいと思い経済学部に進学し、計量経済学のゼミで開発経済学を学びました。
ところがいざ就活となると、学んだことが活かせる仕事がイメージできず悩みました。その中で、掛け持ちして所属していたメディア系のゼミの先輩たちが卒業後イキイキと働いている姿を見て、広告制作会社に就職しました。ただ、まだ迷いがあったので、3年間働いたら立ち止まってもう一度考えようと決めました。

そして、3年後に選んだのは大学院という道だったのですね。

広告の仕事は、長年の勘とか現場の人の阿吽(あうん)の呼吸で物事が進むことが多く、もっと専門的な知識やデータを使って、論理的に高い視座から経営やマーケティングができないかと思うようになり、大学院に入って学び直そうと決意したのです。
大学院でマーケティングを学んだら元の業界に戻るつもりでしたが、国際経営学のゼミの先生に出会い、運命が変わりました。
広告会社で働いていたときに、中国の工場にノベルティの制作を発注したことがあります。試作品を見ながら、こちらの意図に合うように色や細部の修正をお願いするのですが、なかなか伝わらない。文化の異なる国の人に、日本人が好む色や微妙なニュアンスを理解してもらうことがこんなに難しいのかと、ずっと引っかかっていて、それをゼミの先生に話すと、「それは国際経営のテーマだね」と言われました。「そういう学問がちゃんとあるんだ!」と感動して、マーケティングではなく国際経営について学ぶようになったのです。
修士課程修了後、再び進路に迷っていたら、先生から「迷うなら就活も博士課程も両方チャレンジして、通った方に進めば」とアドバイスを受けました。
博士課程に進むとなると、学費や修了後の就職など不安もあります。そこで役立ったのが、学者である両親からの助言でした。博士課程を対象に日本学術振興会の特別研究員(DC1)があることを教えてもらい、申請した結果、採択されました。3年間研究に専念できる研究奨励金を受給できることになったため、博士課程に進みました。
その後、助教や非常勤講師の仕事で経験を積み、縁あって福島大学の経済学類で講師、准教授を務め、2017年から理科大に着任しました。

現在、3歳の双子の子育てと仕事を両立されているとか。ワークラフバランスはどのようにしていますか?

2018年に同じ研究者の夫と結婚し、夫婦協同で現在3歳の双子の子育てに奮闘中です。
育児休業や時短勤務はもちろん、ベビーシッターの補助券や、子どもの通院時のタクシー券など、国や自治体、学内にある様々な支援制度を調べて利用し、なんとか乗り切ってきました。
子どもが生まれてから自分の時間は圧倒的に少なくなりましたが、その分、集中して仕事をしたり、隙間時間を利用するなど、時間の使い方はうまくなりました。

これから研究者を目指す女性たちに、アドバイスをお願いします。

ジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「プランド・ハプンスタンス」というキャリア論があります。「キャリアの8割は偶然のできごとによって形成される」というもので、それを聞いたとき、すごく腹落ちしました。私の人生も、行き当たりばったりだったようで、振り返ってみると、偶然の出会いが全部今につながっていました。
キャリアプランをしっかり立てすぎると、そのとおりにならなかったときに辛くなります。今、やりたいことがわからないという人も、偶然の出会いやできごとをポジティブに受け止めて、自分のキャリアにつなげていくことで、道は開かれていきます。
また、もし研究者の道に進むかどうか迷っているなら、一度民間企業で経験を積んでみてはどうでしょうか。民間企業はどのようなロジックで動いているのか、どのようなコミュニケーション作法があるのかを知ることは、後にアカデミックな世界に戻るとしても決して無駄にはなりません。産学連携のプロジェクトも多いので、企業とアカデミックとの双方を知っておくと武器になると思います。

今後の目標を教えてください。

ここ数年は子育てで余裕がありませんでしたが、少し子育てが楽になったので、研究に向ける時間を増やしたい。そして5年以内には、現在研究している、イノベーションを誘発するコミュニティモデルについて、論文という形にしてアウトプットしたいですね。長期的には、研究成果を地域や企業で実際に活用できるといいなと思います。

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