Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview06
楽しいことってがんばれる。
がんばっていたら、自然と道はつながっていく
鈴木 美央 講師
東京理科大学 経営学部 国際デザイン経営学科
東京理科大学経営学部国際デザイン経営学科講師。博士(工学)。O + Architecture ltd.(オープラスアーキテクチャー合同会社)代表。2006年、早稲田大学理工学部 建築学科卒業。2016年、慶應義塾大学理工学研究科開放環境科学専攻 博士課程単位取得満期退学。専門は、都市計画・建築計画 (公共空間、マーケット、商店街、団地)。受賞歴、令和4年全国広報コンクール 内閣総理大臣賞等。2021年度より現職。

先生の研究内容を教えてください。

専門は、都市計画・建築計画です。中でも、人が集うマーケットに着目した研究を行っています。マーケットという小さな個の集合体がまちを変えていく、人々が集うことでまちが豊かになるということに興味があります。

現在、東京理科大学の講師をしながら、兼職許可を得て会社の代表として実際のまちづくりにも携わっています。研究と実践を行き来しながら得た知見を、相互に活かせることが私の強みであり特徴だと思っています。

先生のこれまでのキャリアを振り返っていただけるでしょうか。

小学校5年のときに阪神淡路大震災を経験しました。実家に大きな被害はありませんでしたが、建築が人の命を奪うこともあるのだと知りました。建築家になりたいと思うようになったのは中学校の頃からです。早稲田大学理工学部の建築学科に進学し、建築の意匠設計を学びました。

卒業後、多くの人は大学院に進学しましたが、私はイギリスに渡り、イギリスの設計事務所で5年間働きました。イギリスでは、高層ビルなど大型建築を主に扱っていましたが、2008年に世界恐慌が起きました。「大きな建築物ばかりを設計しても人の生活は豊かにならない」と、大規模建築に限界を感じ退職。2011年に帰国して、「人が幸せになるために建築ができることは何なのか。建築の可能性を探りたい」と、知人の紹介で慶應義塾大学の研究室に入り、スペイン人の先生の研究補佐として働き始めました。先生の研究テーマは公共空間でした。それが面白くて。私がマーケットに関心を持つようになったのはその先生のおかげですね。

間もなく妊娠して辞めることになりました。その時に先生は、「君は研究に向いている。子育てをしながら博士課程で学んで戻ってこないか」と言ってくださったのです。先生との会話はいつも、妊娠も出産も当たりまえの人生の一プロセスだと気づかせてくれるものでした。

慶應義塾大学の博士課程に進み、そこではマーケットを核とした「公共空間活用」を研究しました。この研究発表が出版社の目にとまり、論文を『マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方~』(学芸出版社)として出版することに。

その本がきっかけとなり、行政から商店街の活性化や公共施設の企画などのお仕事の依頼をいただくようになり、O+Architecture Ltd.(オープラスアーキテクチャー合同会社)を立ち上げました。会社名のOは原点のことで、まちに住む人々意味しています。建築というツールを使って、そこに住む人たちの暮らしを豊かにすることができればという想いが会社名には込められています。

東京理科大学には、2021年度から講師として着任し、現在に至ります。

博士課程と子育ての両立はいかがだったでしょうか。

子育ては思ったより大変でした。子どもが寝ている間に論文を書こうと思いましたが、案外子どもは寝てくれませんし、子どもが寝ている間に自分も寝なければ体がもちません。しかも、在学中に2人目を産んだので、博士課程を修了するのに4年かかりました。

今は、どのように両立をされていますか?

今、子どもは9歳と7歳になりました。まだまだ大変なことは多いですが、私なりの仕事と子育ての両立のコツは大きく2つあります。

1つは、仕事の現場に子どもつれていくこと。子どもも巻き込んで一緒に楽しんでしまうことですね。私のテーマであるまちづくりは、子どもも関わりやすいんです。時には、機械工学系の先生にロボットを見せてもらえる機会があったりして子どもも楽しんでいます。

もう1つは、いろいろな人に助けてもらうこと。ある人が「自立とは、助け合う先を複数持つこと」と言っていましたが、まさにその通りだと思います。依存ではなくみんなで助け合う。助けてもらうだけでなく私も助ける。子育てってとても大変なので、一人で抱え込むよりみんなに協力してもらうほうが絶対にいいと思います。

さらに加えるなら、困ったときはなるべく楽しい解決法を考えること。たとえば早朝の仕事に子どもを同行させるとき、朝早くから子どもを起こして電車に乗せるのはかわいそうだ、じゃあ前日から行ってホテルに子どもと一緒に一泊しよう。そんなふうに解決すれば、大変なことも楽しいイベントになりますよね。

今後の目標を教えてください。

大学の仕事も現場の仕事も楽しいので、このまま楽しくやってきたいですね。学生や、仕事仲間、まちづくりに関わるさまざまな人たちと、仕事をしながらいっしょに成長している感じがすごく楽しくて。

私は建築には人を幸せにする力があると信じています。楽しみながら仕事をして、その結果、人の暮らしを豊かにすることにつながっていけば幸せですね。

これから研究者を目指す方へアドバイスをお願いします。

自分が好きなこと、楽しいことを大事にしていけばいいのではないでしょうか。

私自身は、キャリアパスとか考えず、その都度楽しいこと、やりたいことをやってきました。楽しいことってがんばれる。がんばっていたら、自然と世界が広がって、いつのまにか道はつながっていくと思うんです。ただ、人それぞれですのであくまでも私の場合ですが。

自分を型にはめないことも大事ですね。大学までは、他人と比較して優劣を競ってきましたが、イギリスに行き、子育てしながら大学院に進み、というあたりから、他人と比べても仕方がないなと思うようになりました。なぜなら、他に同じような人がいませんでしたから。みんなとは違うキャリアパスを歩んできたからこそ、それが自分の武器になった。今こうして仕事ができているのも、好きなこと、やりたいことを続けてきたからだと思います。

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