Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview05
「仕事も家庭もどっちも大事」ということが、
よくばりではなく当たり前の社会に
栢木まどか 准教授
東京理科大学 工学部 建築学科
東京生まれ。1999年東京理科大学工学部建築学科卒業。2007年東京理科大学工学研究科建築学専攻博士課程修了。その後、東京理科大学工学部 助教(2007 –2012)、東京大学大学院工学系研究科 特任助教(2012-2013)、株式会社文化財保存計画協会 特任研究員(2013-2014)を務めた後、2014年より現職。

先生の現在の研究について教えてください。

専門分野は、建築史・都市史です。その中でも関東大震災復興期の復興建築に興味があります。

建築史に興味を持つようになったきっかけは?

子どもの頃、両親とよく銀座や日本橋に出かけたことがあり、そのころから建築に興味を持つようになりました。その後、建築史家の藤森照信さんの「路上観察会」やトマソン研究のことを知り、建築物の歴史や、誰がなぜそのようなものを造ったのかという背景に興味を持つようになりました。

これまでどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

高校の時は文学や歴史が好きでした。絵を描いたりデザインをすることも好きでしたので、美術系の大学進学も一時は考えたのですが、もっとモノづくり寄りのことが学びたいと思い、建築学科を目指しました。両親が理系出身なのもあって、工学部に進学することについて応援ムードだったのはありがたかったですね。

東京理科大学工学部建築学科に進学し、最初は建築デザインの道に進もうと考えていましたが、4年次に伊藤裕久先生の研究室で建築史や意匠について学ぶうちに、もっと勉強したい、研究者として食べていきたいと思うようになりました。修士課程まで進み、博士課程にも進みたかったのですが、学費は自分で工面しなさいと両親から言われ、「いずれ大学にもどる」という決意のもと、広告代理店に就職。2年間働いて学費を貯め、博士課程に進みました。

その後、東京理科大学での助教や、東大での特任助教などを経験されたのち、現職に。研究者の道を選ぶときに、迷いはなかったですか。

専門が建築史なので、学芸員とか出版社なら需要があるかな、など考えましたが、研究者の道を選びました。しかし、博士課程修了後は任期職が続いて、気持ち的には不安でしたね。でも、精力的に論文を発表したり調査研究をしたり自分なりに努力をしたことを認めていただけたのか、現在は母校に籍をおき、研究を続けることができています。私は東京理科大学の卒業生なので、母校で働くことができて大変幸せなことだと思っています。私がここまで来られたのは、研究の過程で知り合った多くの方のサポートのおかげだと思います。

ワークライフバランスはどのようにされていますか?

理科大の助教時代に今の夫と知り合い、その後結婚。夫も研究職で、妊娠がわかったときには夫の山形大学赴任が決まっていました。でも、私たちはどちらもキャリアを断念しないということを最初から決めていたので、そのためにどうすればいいか、二人で前向きに考えることができました。

まず、私は職住近接のために大学の近くのマンションに引っ越しました。保育園もすぐ近くのところに入れたので、ぎりぎりまで仕事をしてからお迎えに行くことができます。

また、ルンバや食洗器、ミールキット、生協の宅配など利用できるものは何でも利用し、家事の時間をできる限り短縮しています。夫も、離れた場所にいながらでもできることはすべてしてくれています。オムツや食材の購入は夫がネットでしていますし、週末は3時間かけて山形から帰宅し、子どもの相手や家事をしています。毎日フェイスタイムで顔を見ながら会話をしているので、子どもも父親の不在をあまり感じないですんでいます。

9時から6時までの勤務になり仕事時間は減りましたが、コロナを機に様々なことがオンラインでできるようになり、子育てと仕事の両立には大変助かっています。

これからはどのような目標をお持ちですか。

研究者としての職務を全うしたいですね。母校で教鞭を執るという幸運に恵まれているので、自分が学生のときに大学や先生方から与えていただいたことを、学生たちにお返ししたい。大学で研究し教え続けたいですね。

出産後、なかなかまとまった時間が取れないのですが、これまでの成果を論文にまとめていきたいです。これからの街づくりや都市の形成に影響を与えられるような発見や研究ができればと思っています。

これから研究者を目指す若い学生たちにアドバイスをお願いします。

博士課程に進んでも、研究職のポジションを得るのは簡単ではありません。その点は不安もありますが、自分の好きなことを研究できる楽しさ、やりがいはその不安を凌駕するものだと思います。

また、これからの時代はそれぞれが高い専門性を持つことが価値を持つようになると思います。研究者以外にもその専門性を生かせる場が増えていくのではないでしょうか。

結婚や出産、子育てというライフイベントがありますが、「仕事も家庭もどっちも大事」ということが、よくばりではなく当たり前の社会にしていきたい。その一助となるよう、後輩たちを応援したいですね

そして、もう一つ伝えたいのは、「年を取るのは怖くない」ということ。年を取るほど知恵や経験も増え、いろいろな出会いもあり、人生は楽しくなると感じています。いっしょに楽しく年を取っていきましょう。

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