Interview

本学で活躍する女性教員の紹介

Interview01
向き不向きはやってみなければわからない
試行錯誤もいずれ人生の糧になる
松下 恭子 教授
東京理科大学理学部第一部物理学科
1992年東京大学理学部天文学科卒業。1997年東京大学理学系研究科天文学博士課程修了。東京都立大学で3年、ドイツのマックスブランク研究所で3年、合計6年間ポスドク(博士研究員)を経験し、その後理科大に着任。

研究者を目指すようになったきっかけは?

子どものころから、さまざまな自然科学のトピックスを扱った、講談社のブルーバックスシリーズが好きでよく読んでいました。中でも天文系の話が好きでしたね。立花隆さんが宇宙飛行士にインタビューして書いた『宇宙からの帰還』を読んで、宇宙への興味が高まりました。高校のときに母の知人を介して天文学者に会う機会があって、このころからはっきりと「天文学者になりたい」と意識するようになりました。

先生が研究されているX線天文学とはどういう学問ですか?

「宇宙の歴史を知りたい」というのが私の研究のモチベーションです。X線天文学とは、宇宙空間のX線を観測することにより、宇宙の成り立ちや進化を知る学問です。宇宙に存在するほとんどの物質は超高温で、X線を放出しています。X線は星の名残であり、これを観測することで、100億年前の宇宙がどうだったかを知ることができるのです。宇宙には解明されていないことがたくさんあり、日々、「こういうことだったのか!」と小さな発見をするたびに喜びがあります。それが世の中に直接役立つわけではないので、ほとんどオタク的な喜びですが(笑)。

壁にぶつかったことは? どうやって乗り越えましたか?

大学院生のころ、研究に行き詰まり、自分は研究者に向いていないのかなと悩んだこともあります。しかし、向いているかどうかはやってみないとわかりませんし、その時に試行錯誤したことが今の研究に役立っているので、悩むのも一つの経験だったと今は思います。

天文物理学の分野では女性研究者は1割程度とか。女性であることで苦労したことは?

私が学生のころにはすでに、女性研究者がめずらしくはなくなってきていました。一世代上の女性たちが切り拓いてくれた道を進めばよかったので、私は恵まれていたと思います。むしろ、研究者はある程度目立つことも大事なので、女性であることですぐに覚えていただけたり、得をしたことのほうが多いかもしれません。

ワークライフバランスはどうされていますか?

現在、高校3年生の子どもがいますが、育休を経て仕事に復帰し研究を続けています。研究者は現場を離れると科学技術の進歩から遅れてしまうのではと不安を持つかもしれませんが、今はパソコンとネット環境さえあれば情報はキャッチアップできます。それほど心配することはないと思います。
読書が好きなので暇があれば本を読んでいますが、子育て中は土日でも休む暇はなかったですね。研究と家庭の両立には、配偶者選びは重要かもしれません。子どもを持つか持たないか、仕事を続けるか、教育方針は?など価値観が同じ人かどうかは大事なポイントですね。

研究者を目指す女性たちに、メッセージをお願いします。

必ずしも研究者を目指すことはないと思いますが、女性も経済力があったほうが良いのは確かです。文系よりも理系のほうが職を得やすい。学力テストなどを見ても理数系の点数に個人差はあっても男女差はほとんどありません。苦手意識を持たず、どんどんリケ女が増えてくれるといいですね。研究で身につくデータを読み解く力や論理的思考力は、どんな仕事に就いたとしても役立つと思います。

今後の目標を教えてください

これまでもそうであったように、とにかく好きなことをずっとやっていきたいですね。
今一番知りたいことは、どのようにしていろいろな天体ができたか。宇宙は果てしないので、おそらく研究に終わりはない。でも果てしないから楽しいのだと思います。

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