2023.04.07
続きを読む

多様化する発電形態の最適化を図るためのに機械学習を採用。

太陽光発電設備や蓄電設備を設置した住宅で、時間帯ごとの電力消費量や電力料金単価、太陽光発電の売電単価などを踏まえつつ、自動で両設備を制御するシステムを開発しています。つまり、人が介在しなくても、利用者が求める価値を最大化するエネルギーマネジメントシステムです。研究では、機械学習の一種である深層強化学習を採用して、経済性や環境負荷など、あらかじめ設定した報酬が最大になるよう、何千万年、何憶年分もシミュレーション上で学習を繰り返してきました。特定の負荷パターンを学習し、選択したバターンごとに決まった制御を行うのではなく、制御法も自ら学習し、最適化していく仕組みです。2021年度からは研究施設に太陽光発電設備や住宅用蓄電設備を導入して、家庭の電力消費データをもとにした模擬的な電子負荷を使った実証試験を始めました。シミュレーションモデルと実機が同じ動きをするかどうかを検証しています。つまり、現実世界で得られたデータをもとにデジタル空間で再現するデジタルツインをつくり、それを実環境で動かし、見つかった誤差をシミュレーションに反映し、再び実環境で動かすというサイクルを回しています。

太陽光パネルの異常検知技術も研究中。

それ以外にも、複数の太陽光関連分野の研究を手掛けていますが、代表的なものが遠隔から故障を検知する技術、交流インピーダンス法による異常検知技術です。直流コンバータから太陽電池に微小な電圧を印加し、電流応答からインピーダンスを算出、正常時のデータと比較することで異常を見つけ出します。ストリング単位またはパネル単位で異常を検知し、太陽電池のクラックやPID(電圧誘起劣化)のほか、断線や腐食なども検出できます。この技術は外付けの直流コンバータや測定機器としての製品化のほか、PCS (パワーコンディショナ)にも内蔵している直流コンバータにソフトウェアを搭載すれば実装可能です。EL (エレクトロルミネッセンス)法と比べて、約10倍の精度があり、細かな不具合や前兆が発見できます。測定自体は1~2秒で終わるため、1日1回測定するよう設定しておけば、日常的に確認できる仕組みです。

創域理工学部 電気電子情報工学科
片山昇准教授

■ 主な研究内容

専攻分野は、エネルギー・環境工学。自動車用・情報機器用燃料電池システムの開発、エネルギーデバイスの故障診断・監視システムの開発、水素貯蔵技術・固体高分子形燃料電池の基礎研究などに取り組んでいる。

おすすめの取り組み