※内容は「東京理科大学報」 vol.214 掲載時のものです。

病と闘う世界中の患者さんのために
情熱をもって新しい医薬品を創出したい。

メディシナルケミスト(創薬化学者)として未来の医療を担う研究を続ける
第一三共 株式会社
オンコロジー統括部 創薬化学研究所
第2グループ専門研究員

荒井 良和さん

第一三共 株式会社
オンコロジー統括部 創薬化学研究所
第2グループ専門研究員
2010年、東京理科大学 薬学部生命創薬科学科卒業。 2012年、薬学研究科薬科学専攻 修士課程修了。 同年、第一三共株式会社の子会社であるアスビオファーマ株式会社に研究職として入社。 2015年より第一三共株式会社へ出向。 2018年4月、アスビオファーマ株式会社の統合に伴い、正式に第一三共株式会社 研究開発本部に所属。

「未来の医療を担う研究をしているという誇りと患者さんのために新しい医薬品を届けたいという創薬の夢に向かって、日々邁進していきたいです」

 主にがんなどの腫瘍に関する新薬開発を行っている荒井さんは、本学の生命創薬科学科(4年制)の第一期生として入学。修士課程修了後、製薬会社に就職。低分子医薬品の創薬研究者としてのキャリアをスタートさせた。「もともとは工学系志望だったのですが、親族の病気をきっかけに、脳や人体のメカニズム、薬学という分野に興味を持つようになりました。そして、薬学を学ぶなら研究に強い理科大がいいかなと。自分はすぐに甘えてしまうタイプなので、あえて過酷な環境に身を置きたいという理由もあって、進級やレポート課題がハードだと言われる理科大を選びました。在学時は、内呂教授の有機化学の講義が非常に面白く、そこからは有機合成化学を専門に学ぶように。4年次の卒業研究では、恩師である内呂教授の指導の下、『抗腫瘍性物質GKK1032A2』というがんに効果が期待できる天然物をいかに効率的に合成できるか。また、その天然物ががんにどのように作用しているのかという機能の解明を目的として研究していました」。

第一三共 株式会社から発売されている医薬品

 現在は、メディシナルケミスト(創薬化学者)として、創薬テーマの立案から、医薬品のモトとなるような新規化合物の発見、臨床試験に入れるような化合物をデザイン・合成することが業務だという。薬という形になるずっと手前の上流の部分での業務だ。「新薬の研究というのは日々トライ&エラーの繰り返し。精神的にも肉体的にも、実はとてもハードなんです」。そんな荒井さんは、大学時代にはテニスサークルに所属していたこともあり、休日にはスカッシュを楽しむなどしてリフレッシュしているそう。「薬が世の中に出るまでには、基礎研究、臨床試験、承認申請など、10年〜15年はかかります。さらに、自分が携わった薬を世の中に出せる機会に恵まれる人は、実はほんのひと握り。ですが、未来の医療を担う研究をしているという誇りと患者さんのために新しい医薬品を届けたいという創薬の夢に向かって、日々邁進していきたいです」。人に優しく自分に厳しい荒井さんらしい、力強い言葉だった。

第一三共株式会社の低分子医薬品 エドキサバン(製品名:リクシアナ)の分子モデル