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2020.04.20 Mon UP

本学教員が2020年日本建築学会著作賞を受賞

本学教員が2020年日本建築学会著作賞を受賞しました。
会員が執筆した建築にかかわる著書であって、学術・技術・芸術などの進歩発展あるいは建築文化の社会への普及啓発に寄与した優れた業績に贈られます。

受賞者 工学部 建築学科 助教 石榑 督和
受賞題目 『戦後東京と闇市―新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織』鹿島出版会刊(2016/09発売)
受賞内容 以下、選評より転載。
本書は、新宿、池袋、渋谷の駅前空間の変遷を、地図や地籍図、換地資料、史資料などをこれ以上ないほどに整理し、戦前からの変化を刻々と克明に明らかにした都市の生態学的労作である。この本に要した作業量を推察すると叶うものが見当たらない。しかしこの本は2014年に明治大学に提出された学位論文「闇市の形成と土地所有からみる戦後東京の副都心ターミナル近傍の形成過程に関する研究」が基礎となっており、2015年には日本建築学会奨励賞を、2016年には住総研の博士論文賞を受賞するなど、学術的な評価はすでになされており、作業量については合点がいく。著作賞にあたっては、学位論文をどれだけ平易に、社会へ普及するようリライトされたかも重要な焦点となった。

この手の本では図版の位置が重要である。まとめて章の頭に置かれたカラーの図版は読者を引き込むことに成功している。章末のチャート図も流れをおさらいするのを助けてくれる。ただしその間の文章はずっしりとあり、すっと頭に入るものではない。ある程度の土地勘も求められる。しかし文章とその構成が秀逸である。テキ屋の人生、地主の思惑、鉄道会社や百貨店の企業戦略等が、駅前というポテンシャルの高い空間で押し引きしながら、固まっていく道程は読む者を引きつける。都市のビジョンを描いたのは自治体でも建築家でもない、複数の思惑や理想像がせめぎあい、偶然が重なって等々、当時の息遣い、いや怒声も聞こえるかのようである。過去から現在までの都市の変化を眼前で見せられているように錯覚する。新宿、池袋、渋谷を利用したことのある一般の人も惹きつける啓発性の高い本になっている。また、きれいな歴史、シンプルな歴史など存在しないのだという当たり前のことにも気付かされ、研究者に対して歴史を矮小化するなとメッセージが発せられているようにも感じる。また巻末には調査方法が述べられており、今後のさらに若い研究者はぜひ参考にされたい。

以上、本書は戦後にフォーカスするという都市計画分野の新しい潮流のなか、その描き方も膨大な資料の収集と緻密な読解によって既存の枠組みに囚われない手法で、複数の主体をフラットにそして深く捉え、他の研究領域にも大きく示唆を与えるもので、多角的な意義があるものと評価される。このような野心的な本を30代の若手研究者が書いたことも大いに評価したい。 よって、ここに日本建築学会著作賞を贈るものである。
受賞日 2020年4月17日

日本建築学会
https://www.aij.or.jp/
2020年日本建築学会大賞 各賞受賞者
https://www.aij.or.jp/2020/2020prize.html

石榑助教 大学公式ページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?

本学教員が2020年日本建築学会著作賞を受賞
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