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ハエノ ヒロシ
波江野 洋  准教授
東京理科大学 研究推進機構 生命医科学研究所
プロフィール | 研究シーズ | 研究室紹介 | 担当授業(20件)
レフェリー付学術論文(36件) | その他著作(1件) | 学会発表(31件)
研究室名 数理生物学研究室
トピックス

がん進展の理論研究
がんによる免疫逃避進化の理論研究
薬剤耐性獲得の理論研究
乳腺組織におけるがん発生の数理モデル研究
大腸癌におけるがん免疫逃避進化の数理モデル研究
肺がんに対する分子標的薬の最適治療戦略の数理モデル研究
クローナル造血の数理モデル研究
など

専攻分野 数理生物学・腫瘍生物学
研究分野 コンピュータシミュレーション、確率過程、力学系
紹介

がんが正常細胞から発生する過程や薬剤耐性を獲得する過程をヒト体内での細胞の進化過程として捉え、確率モデルや微分方程式系を用いて進化動態の解析を行っています。がんは異常増殖した細胞集団によって形成されることが知られていますので、細胞集団が出生死亡過程を経て増殖している状態を数理モデルを用いて解析することで、がんの本態を数式によって理解することができると考えています。具体的な研究例として、膵臓がんがある大きさで診断された時、転移が起こっている確率と転移細胞集団の数の期待値に関して、確率過程の1つである分枝過程の解析から理論式を導き、臨床データによるモデルパラメータの推定を行い、膵臓がん進展過程を明らかにしました (Haeno et al. Cell 2012)。また、名古屋大学医学部脳神経外科との共同研究では、臨床データに基づいた数理モデル解析によって、低悪性度脳腫瘍の悪性化を抑えるのに最適な治療法を明らかにしました(Aoki et al. Cancer Res. 2021)。さらに、マイクロサテライト高不安定性大腸癌においてがんが免疫から逃れる機序を数理モデルで表しました(Kawazu et al. Gastroenterology 2021)。

研究テーマ
  1. 臨床データと数理モデル解析による低悪性度脳腫瘍の悪性化を抑える最適な治療法の提案

    Aoki et al. 2021. Cancer Res. (共同責任著者)では、臨床データに基づいた数理モデル解析によって、低悪性度脳腫瘍の悪性化を抑えるのに最適な治療法を明らかにしました。低悪性度脳腫瘍の治療法には、手術、化学療法、放射線治療があるが、化学療法と放射線治療は遺伝子変異を誘発することで腫瘍の悪性化を促進する可能性も報告されていました。そのため、どの治療をどのタイミングで行うのが悪性化を防ぐために最適な治療であるかはわかっていませんでした。本研究では、日本の10施設にて治療を受けた276名の低悪性度脳腫瘍患者さんの経過中の全てのMRIデータと治療歴を用いて、腫瘍進行に関する数理モデルを構築し解析を行いました(図1)。その結果、化学療法や放射線療法などの術後治療は腫瘍の成長を抑制するものの、細胞あたりの悪性化のリスクを増加させることがわかりました。更に、症例毎に悪性化を防ぐ理想的な治療法が異なることを初めて示すことができました。本研究成果は、 “それぞれの患者さんとって”最適な治療戦略を明らかにした、とても重要な知見です。本研究は日本経済新聞電子版などに掲載されました。

  2. 臨床データに基づいた数理モデル解析による膵がん進展の予測

    Haeno et al. 2012 Cell. (共同筆頭著者)では、膵臓がんがある大きさで診断された時、転移が起こっている確率と転移細胞集団の数の期待値に関して、確率過程の1つである分枝過程の解析から理論式を導き、臨床データによるモデルパラメータの推定を行い、膵臓がん進展過程を明らかにしました。利用した臨床データは、断層撮影による画像から得られる腫瘍直径データと、剖検時に観察された転移細胞数と転移巣の数に関するデータで、Johns Hopkins病院の共同研究者から101例の提供を受けました。推定したモデルパラメータを用いて、推定に使用したデータとは独立した127例の生存率の予測を行ったところ、数理モデルによる予測は非常によく合うことが確かめられ、一般性が実証されました。さらに、推定されたパラメータを用いると、腫瘍サイズが4cm以上の場合、ほぼ100%転移が存在していることが示唆されました。本研究は2014年3月18日(火)の日本経済新聞で「がん進行 数式で予測」という記事で紹介されました。

研究室メンバー
  1. 准教授 波江野 洋 HAENO Hiroshi
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