酒井 秀樹

チームリーダー

理工学部 先端化学科 教授

研究分野

  • ナノ構造化学 (ナノポーラス材料、中空粒子、コア/シェル粒子、ナノシート)
  • ナノ材料化学 (ドラッグデリバリーシステム、リポソーム、膜透過ペプチド)
  • 物理化学 (表面物性、界面物性、溶液物性、相図)
  • 機能物性化学 (界面活性剤、自己組織化、エマルション、ナノ粒子)
  • 有機・ハイブリッド材料 (界面活性剤、エマルション、表面処理)

研究キーワード

応用界面化学、界面光電気化学

研究経歴

1995-現在 光電気化学、応用界面化学の研究に従事

光触媒反応を利用した希少糖の生成に及ぼす酸化チタンの結晶型の影響

医薬品や食品への応用が期待されている希少糖は、従来酵素反応により合成されてきたが、当グループではグルコース水溶液中での光触媒反応により希少糖が生成可能であることを見出している。本研究では、酸化チタン光触媒の結晶型、粒子形態が希少糖の生成効率に及ぼす影響を検討した。その結果、ルチル型結晶、特にロッド型酸化チタン粒子を用いた時にアラビノースやエリトロース等の希少糖が高効率で生成することを見出した。

 

インタビュー

■なぜ宇宙の研究をすることになったか?

宇宙に関する子供時代の印象に残っている記憶は、中学の林間学校の時に見たふたご座流星群です。たくさんの流れ星を見て、星に興味を持ちました。実は、その時一緒に流れ星を見ていた友達は、今JAXAで「はやぶさ2」のプロジェクトに携わっています。私は宇宙とは関係のない研究分野に進んだつもりでしたが、現在、スペース・コロニー研究センターで宇宙関連の仕事をしているのは感慨深いです。

学生時代は光触媒反応のメカニズムに関する研究をしていたのですが、理科大に赴任後は界面化学の研究室に所属することになりました。光触媒反応は界面で起きるため、その界面制御(表面積の増大など)が重要となります。そこで、界面がナノスケールで制御された高機能の光触媒の開発を行うようになりました。

自分の研究が宇宙と関わることになったきっかけは、約10年前にJAXAの応用利用プロジェクトで、「チタニアナノスケルトン」(規則的細孔を有する高機能光触媒)を宇宙ステーション、すなわち微小重力下で作製するプロジェクトに参加したことでした。微小重力環境でチタニアナノスケルトンを作製すると、地上で作製するよりも結晶性が向上し、また細孔のサイズが拡大できることを報告しました。このプロジェクトから宇宙との関わりがスタートしました。

■研究開発した、あるいは、している技術をつかって宇宙で実現したいことは?

光触媒、界面科学という立場から、宇宙空間でのクオリティ・オブ・ライフの向上につながる研究ができればと思います。私の所属するチーム4では、光触媒を利用して、宇宙船内で生成する有害気体(アンモニア、メタンなど)・廃棄物などを浄化可能な光触媒の開発に取り組んでいます。

一方で、以前のチタニアナノスケルトンのプロジェクトからもつながりますが、チャンスがあれば、微小重力空間を利用して、地上では作れないような結晶・材料を作りたいという希望があります。例えば、地上では油は水と分離してしまいますが、微小重力下では、油の微細な滴(エマルション)を長時間水中に分散できるようになります。この安定なエマルションを使って、地上ではできないようなサイズの揃った触媒粒子などを宇宙で作ってみたい。

■地上で実現したいことは?

宇宙空間で光触媒を有効に使おうとすると地上以上にその活性・機能を上げていく必要があります。そこで、光触媒の基盤となる技術が「研ぎ澄まされ」向上します。宇宙空間でそのような新しい材料が作れれば、それを地上にフィードバックすることにより、地上(=我々が通常生活する空間)においても、より質の高い材料を作れるようになるのではないかと期待しています。

その結果、光触媒が病院の手術室や、保育施設、住居などに加えて、地震や疫病流行など災害時の住居テント、仮設病院などに応用することも可能になるのではないかと期待しています。

■研究していて印象に残ったこと・楽しいと感じたことは?

もともと宇宙に興味はありましたが、自分の研究分野が宇宙につながることは思っていませんでした。自分の専門領域である界面化学や光触媒が、宇宙という遠いと考えていた領域につながって行くのを夢見ながら、スペースコロニー研究センターにて研究を進めていきたいです。

論文リスト

1. “Amino Acid-Type Photo-Cleavable Surfactants: Controlled Dispersion Stability of Silica Particles and Release of Active Ingredients”, Masaaki Akamatsu, Tsubasa Nagai, Kaori Fukuda, Koji Tsuchiya, Kenichi Sakai, Masahiko Abe, Hideki Sakai, Colloids and Surfaces A-Physicochemical and Engineering Aspects, 564, 108-114, 2019. (査読有)

2. “Phase Behavior of Ester Based Anionic Surfactants: Sodium Alkyl Sulfoacetates” Avinash Bhadani, Ananda Kafle, Taku Ogura, Masaaki Akamatsu, Kenichi Sakai, Hideki Sakai, Masahiko Abe, Industrial and Engineering Chemistry Research, 58(16), 6235-6242, 2019. (査読有)

3. “Effect of β-Sitosterylsulfate on the Properties of DPPC Liposomes”, Ananda Kafle, Masaaki Akamatsu, Avinash Bhadani, Kenichi Sakai, Chihiro Kaise, Teruhisa Kaneko, Hideki Sakai, Journal of Oleo Science, 67(12), 1511-1519, 2018. (査読有)

4. “Photoinduced Viscosity Control of Lecithin-Based Reverse Wormlike Micellar Systems Using Azobenzene Derivatives”, Masaaki Akamatsu, Mayu Shiina, Rekha G. Shrestha, Kenichi Sakai, Masahiko Abe, Hideki Sakai, RSC Advances, 8(42), 23742-23747, 2018. (査読有)

5. Effects of β-Sitosteryl Sulfate on the Phase Behavior and Hydration Properties of Distearoylphosphatidylcholine: A Comparison with Dipalmitoylphosphatidylcholine, Ananda Kafle, Takeshi Misono, Avinash Bhadani, Masaaki Akamatsu, Kenichi Sakai, Chihiro Kaise, Teruhisa Kaneko, Hideki Sakai, Journal of Oleo Science, 67(4), 433-443, 2018. (査読有)

6. Oil-in-Water Emulsions Stabilized by Acylglutamic Acid-Alkylamine Complexes as Noncovalent-Type Double-Chain Amphiphiles, Toru Tojinbara, Masaaki Akamatsu, Kenichi Sakai, Hideki Sakai, Langmuir, 34(1), 268-272, 2018. (査読有)

(総説)

7. “界面活性剤混合系で形成するベシクルの機能性材料への応用”酒井秀樹、
膜(MEMBRANE)、44(2), 76-84, 2019. (査読有)

8. “界面活性剤混合系での分散安定性に優れるベシクルの調製とその応用”
酒井秀樹、土屋好司、山口俊介、遠藤健司、オレオサイエンス、18(1), 11-19, 2018. (査読無)