高橋秀依教授高橋秀依教授

薬学の真の実力とは
医薬分子を通してあらゆる場面で

スペシャリストとして行動し、
高い問題解決能力を発揮できる。

薬学部薬学科高橋秀依教授

薬学の役割は、人類の健康を守ること。
命の現場に関わる薬学の専門家は、
その場で自ら判断し、

行動できる能力が必要不可欠です。

01専門基礎スペシャリストの基礎づくり

従来の薬剤師のイメージは、「調剤棚の前で薬をそろえて渡す人」というものだったかもしれません。しかし、これからの薬剤師には一人ひとりの患者さんにより積極的に関わり、刻々と変わる状況をきちんと把握し、適切に対応できる力が求められています。そのためには、「一粒の薬が世界中の人々を救うことができる」という熱い信念をもって生涯学び続けることが大切です。
まず「基礎科目」では創薬科学、生命薬学、環境・衛生薬学、医療薬学という4つの学問領域に共通した基礎薬学に関する知識と技能を身につけていきます。さらに「専門科目」では、問題解決能力とともに優れた人間性を養います。
私が受け持つ1年生の有機化学の授業では、最初に「消毒用のエタノール水の濃度はなぜ80%なのか」というテーマを学生に課しました。計算をしてみると、じつはこの濃度は水とエタノールの分子がほぼ1:1であることが分かります。この状態が、ウイルスを包むタンパク質を最も壊しやすいのです。しかし、なぜそのようになるのかという詳しい仕組みはまだ解明されていません。
この一例をとっても、エタノールが気化する現象は物理や化学、ウイルスの組成は生化学など、生命現象はいろいろな学問分野が複合的に関わっていることが分かります。そのため、それぞれの科目を別々のものとしてとらえるのではなく、互いに相関していることを意識しながら学ぶことが大切です。
そして、何よりも薬学を学ぶ礎となるのは、人命を最大限に尊重するためのヒューマニティです。1年次の早期体験学習では、薬局や病院で働く薬剤師や企業の研究開発者、特に患者さんから話を聞くことで、「なぜ自分は薬学を学ぶのか」という明確な動機づけができると思います。また、一般教養科目では語学力、コミュニケ―ション能力も高め、グローバルに活躍できる人材を育成しています。

一言コメント

本学の先生方は非常に熱心であり、学生たちにも高いレベルの能力が求められます。小テストやレポート提出の頻度も高く、1、2年で鍛えられるのが理科大の伝統です。学力のみならず、薬学を学ぶ者として相応しい姿勢や礼儀正しさも求められます。

02卒業研究研究の第一歩は“尖りながら広がる”

専門基礎を修得した後は、卒業研究に取り組みます。その際に意識してほしいのが、薬学と理工系の学問との明確な違いです。それは、薬は必ず「使う人がいる」ということ。例えば創薬化学では、薬を化学合成すること、それ自体を追求するのではなく、化学合成の先に薬があり、その先には更に患者さんがいることを常に念頭において研究を進めます。極端な言い方をすれば有機合成化学は手段にすぎず、最終目的は人の命を救うこと。そして、医療に貢献することです。
日頃のニュースにも注意深くアンテナを張っておく必要があります。製薬会社に入社するなど、新薬の研究に携わる場合、過去の多くの事例を知った上で、あらゆる有害現象が起こり得る可能性を見通して医薬品の創製を考えなければなりません。ほとんど検出できないようなごくごくわずかな量でも異物が混入したら、患者さんに大変な被害を与えることになります。薬学研究のイメージは、「尖りながら広がる」。専門性をひたすら追究する=尖るだけではなく、生命現象に関わるさまざまな事柄を関連づけ、幅広い視野を持たなければ問題を解決できません。
研究室に入ってからが、本当のスタートです。自分がどんな分野に進みたいのか、まだ漠然としているかもしれませんが、ぜひ自分が納得できるテーマに取り組んでください。私たち教員がその研究の具現化をサポートします。また、自分の研究テーマだけでなく、隣の実験机の人の研究テーマや全然違う分野の友だちの研究テーマについても興味を持つことをおすすめします。研究マインドをもって生涯にわたり医療に貢献するために、薬学における研究の位置づけを理解すること。そして自分の研究に関わるあらゆる事柄を貪欲に吸収して、研究に取り組む姿勢が重要です。研究のプロセスを通し、ものごとを科学的にとらえる能力とともに、研究を遂行する意欲と問題発見・解決能力を高めていきます。

03専門研究医療につながるゴールを目指す

大学院の専門研究(主に先端創薬科学を担う研究者・技術者の育成を目的とする生命創薬科学科(4年制)の学生)では、ぜひ医療や医薬品につながるゴールを意識して取り組んでください。薬を必要としている患者さんたちのために役に立つことを、常に考えるヒューマニズムが大事です。そのためには現実に起こっている問題や病気について、自分の研究テーマがどのように関われるのかを意識します。いろいろな職業の人、患者さんと接して、自分の研究を客観的にとらえることが大事です。
自分が今、取り組んでいる研究テーマはどのような意義があるのか。また、社会で役立てるためには、どうすれば良いのか……。ほとんどの人がよく分からないまま、研究をスタートさせていると思います。しかし、論文を読み、学会に出席していろいろな人たちと話をするうちに、だんだんと自分の研究の位置づけや世界のレベルが分かってきます。すると次第に自分の研究を客観視することができるようになり、同時に「こうしたい」という自らの意志が強くなります。例えば、留学したい、国際学会に出席して英語でプレゼンテーションをしたいなどです。
研究の世界では若い人の方が、考える力をもち、すごいアイデアを出せると個人的には考えており、私たち教員の知見やノウハウをある程度吸収してしまえば、あとはもう自分の望むほうへ走り出してくれれば良いと思っています。
専門基礎の課程から鍛えられてきた理科大生は、「自分を高めよう」という意識を常にもち、社会のリーダーになるべき人たちです。社会で活躍する貴重な人材を、研究室で待っています。

理科大生手形

薬学系の学習のいい学び、
悪い学びをそれぞれご紹介します!

  • 良い例

    自分の研究テーマだけでなく、友だちや先輩が取り組む全然違う分野の研究テーマについても興味をもち、話を聞いてみる。セミナーや学会などにも積極的に出席すると、視野が広がる。また、教科書を漫然と学ぶのではなく、異なる分野で教わる内容をそれぞれ突き合わせて考えていくと総合的な理解がしやすい。

  • 悪い例

    「友だちがこう言っていたから……」など、ほかの人の意見に流されて、自ら考え行動することを投げ出してしまう。たとえ同じ実験で、同じ結果が出たとしても、そのデータの見方が変わればまったく違う考察になるため、友だちのレポートを丸写しにしても意味はない。大事なのは自ら考えて判断し、行動につなげること。