遠藤恆平准教授遠藤恆平准教授

理学の真の実力とは
さまざまな現象のしくみなどを
解き明かし、
何もないところから
価値のある知識を生み出すこと

理学部第一部 化学科遠藤恆平准教授

理学は、社会も含めてすべての現象を解き明かす学問だといえます。
現象を理解する方法は
一つではなく、
どのような方法で理解するのかということも
含めて探っていきます。

01専門基礎勉強でも何でも、継続することを目標に

私の研究分野である有機化学は、生命に関わる物質について理解することから始まった学問です。そのため、物質の中でも炭素原子を含む分子などが研究対象になります。さまざまな分子をつくる過程や、化学反応によってできた分子の性質などを探っていきます。私自身は高校生までは化学はあまり得意ではなくて、どちらかといえば数学の方が得意でした。でも、将来、自分が何をやりたいか考えていったときに、「生物を分子レベルで操る研究がしたい」と思うようになり、有機化学の勉強をするようになりました。元々化学は得意ではないので、今でも化学に対しては苦手意識があります。
大学に入っても、自分のやりたいことがなかなか見つからない人も多いと思います。そういう人は、まず、何でもいいので継続することを目標にしてみるといいのではないでしょうか。私自身、有機化学は苦手でしたが、やり続けた結果、大学教員にまでなっています。周りの教員に話を聞いてみると、「学生時代の成績はよくなかったけれど、自分がおもしろいと思ったからやり続けた」という人は多いです。
また、学生の中には成績を理由にしてやりたいことを諦める人もいますが、そこで諦めてしまうのはもったいないと思います。得意なこととやりたいことが一致しないことはよくあります。それでも、どうすればやりたいことができるのかを考えていけば、道が開けることがあります。例えば、有機化学の研究をやりたいが苦手だという人は、物理化学をしっかりと勉強することで、物理化学の手法を使って有機化学の研究をすることもできます。私は、数学などと比べると、有機化学はおもしろいと思ったことがないのですが、大学の研究室の情報などを調べてみると、おもしろそうな研究をやっている人たちがたくさんいたので、「将来、おもしろい研究ができるはず」と考えて、渋々勉強を続けてきた経験があります。はじめから何をしたいのか分からない人は、まずは大学の勉強を続けることを目標にして、その中からおもしろいこと、興味のあることを探していくのがいいのではないかと思います。

02卒業研究研究を体験し、論文という終着点を意識する

理学部の場合、多くの学生が大学院に進みます。そのため、大半の研究室では、大学での卒業研究は予備的なものと位置づけていると思います。海外では学部生のうちは実験をしないで卒業することもあるので、大学生のうちに早めに実験ができて良かったととらえる方が良いでしょう。研究を始めると、実験、論文の読み込み、データの分析など、たくさんの時間を費やさなければいけません。4年生では研究生活に慣れることも重要です。
研究生活のスタートラインに立つには、まず、英語の論文をたくさん読む必要があります。研究室には4年生から博士課程の学生までさまざまな学生が所属しています。研究室で研究を進めるには、まず、研究に必要な専門用語などを覚えることから始めないと、他の学生と話ができません。1年間かけて研究生活に慣れていく時間と考えて、自分の生活を変えていくことも大切です。
私の場合だけかもしれませんが、卒業研究では、実験でいい結果が出るとか、出ないとかということに左右されすぎでもいけません。1年間の卒業研究だけでは、成果が出ないことの方が普通です。信頼性の高い研究結果は、長期的な実験の積み重ねが求められます。卒業研究の経験を通して、研究の奥深さを知るだけでも価値はあります。
研究は仮説を立て、実験などを通して実証していく作業です。例えば、同じ実験でも実験をする人によって結果が大きく変わってしまうこともあります。そのようなときに、どれだけ自分自身が信じられる仮説を立てたり、実験をしたりしたのかが重要です。
たとえ満足のいく結果が出なくても、その結果を堂々と発表できるくらいの自信をもつことが大切です。結局、そのような自信を身に付けるには、自分の意思で学んだり、考えたりする力が必要になります。自分の取り組みが結実し、形になっていく過程を体験できれば、自然と自分を信じられるようになるものです。

一言コメント

自分が論文を書いて発表するという終着点を常に意識して過ごせば、日ごろの実験や論文を読むときなどに、自分が何をすれば良いかも自然と分かってきます。

遠藤恆平准教授

03専門研究観察、仮説、実験、考察を1人でできるようになる

私が所属した研究室は、大学院の学生は「何も聞いてはいけない」という決まりがありました。自分の研究テーマを完成させるために必要なことはすべて自分でやらなければいけなかったのです。理学の研究は、観察、仮説、実験、考察という流れで進んでいきます。大学院に進学した人は、この一連の流れを1人で行うことが求められます。ところが、これを1人の力だけで行うのはとても難しいことです。最初の観察については、さまざまな現象を観察することで研究のテーマが生まれるという意味ですが、最近の研究では、指導教員がテーマを決める場合も多いので、残りの仮説、実験、考察を1人で完結できるかがとても重要になります
修士課程で観察、仮設、実験、考察の流れをすべて1人でできるほどの力があれば、博士課程に進学しても問題ないでしょう。しかし、修士課程の学生は、大抵どこかでつまずきます。多いのが、仮説を立てるところで失敗する、実験の後に考察できないといったパターンです。このようなときは、指導教員などに相談をする必要があるのですが、安易に指導教員に指示を仰ぐと、その指示がなければ動けない人間になってしまいます。
研究とは、何もないところから価値のあるものを生み出す行為ともいえます。どのような仮説も、自分1人で生み出さなければいけません。教員に相談するにも、これまで学んできたことを下敷きにして、自分で考えていく必要があります。自分自身の考えを持って、「このように自分は考えている」と述べた上で議論をしなければ、教員に言われるがままに作業するだけになります。
では、どうすれば、観察、仮説、実験、考察のそれぞれのステップを自分でできるようになるのでしょうか。その方法は人それぞれです。こうすれば実力がつくという一般的な方法はないと思います。そういう意味では、どうすれば実力がつくのかについて自分なりの仮説を立てて、実証するという態度で研究や勉強に臨むと良いのではないでしょうか。

理科大生手形

理学系の学習のいい学び、
悪い学びをそれぞれご紹介します!

  • いい学び

    いい学び

    学びの基本は自分で考えることです。授業を受ける態度、実験、レポート、試験など、すべてのことに工夫が求められます。勉強法についても、1人1人の特性によって最適なものは違うと思います。例えば、一般的に勉強は毎日コツコツとルーチンワークのようにやると良いと言われています。しかし、中にはそのような勉強法が合わなくて、短期間で集中的にやると身につく人もいます。自分はどちらが合うのかを知るためには、常に考えて工夫する必要があります。

  • 悪い学び

    悪い学び

    学びにとって最も悪影響を与えるのが問題の放置です。卒業研究に取り組むようになると、「自分の研究がうまくいかない、どうしたらいいですか」に聞いてくる学生がいます。ただ聞くだけでは、自分の力を伸ばすことはできませんが、問題を放置するよりは良い態度と言えます。分からないことやうまくいかないことを放置し続けると、取り返しのつかない状態になってしまいます。そうなる前に、自分で調べたり、誰かに相談したりする必要があるのです。