大江秋津教授大江秋津教授

経営学の真の実力とは
経営学の様々な理論や

研究成果を横断的に理解し、
その知識を現実社会で実践できること

経営学部 経営学科大江秋津准教授

一生の間に人が会社や組織で実際に体験し
学べることには限りと偏りがあります。ところが、経営学を学ぶと様々な研究成果から、
グローバルで普遍的な知識を身に付けられます。

01専門基礎専門外の教養分野こそよく勉強しよう

経営学は、企業など組織を運営するときに、合理的に意思決定していくために役立つ学問です。例えば、海外に工場をもつ企業の経営をするときのことを考えてみましょう。あなたが経営者であれば、工場の生産性を上げるために、どんなことをしますか。日本から幹部社員を派遣して、常にその人の指示にしっかりと従うように指導しますか。それとも、現地の社員の裁量に任せますか。私たちの研究によれば、日本のスタッフが基本的な技術や生産管理方法を教えた後は、現地社員の裁量に任せた方が、生産性が飛躍的に上がりやすいことが分かりました。
このことは、経営者は経験上分かっていたかもしれません。でも、個人的な経験から得た直感のようなものではないかと思い、現地の人たちに任せるかどうか大いに迷っていたはずです。また、これまでの日本的経営では現地工場を直接管理してきました。しかし、最新の経営学の理論や研究成果を知っていれば、安心して経営の意思決定ができます。経営学を学ぶ人たちには、最終的にこのような人材になってほしいのですが、まず、1〜2年生の専門基礎の段階では、専門科目だけでなく、教養科目も幅広く学ぶことが大切だと考えています。経営は確かに企業や組織の意思決定をする上でとても重要なものですが、経営自体はお金を産みません。お金を産むのは自社の製品やサービスです。イノベーションを起こすような製品やサービスをつくっていくためには、物理、化学、数学、工学など、経営学とは関係のないたくさんの知識が必要になります。
そのような幅広い知識をしっかりと吸収できるのは1〜2年のときしかありません。教養の授業を受けもつのは、その分野の専門家です。専門家から直接学べることはとても贅沢なことなのです。このような話をすると、「何を学んだら良いか分からない」「興味があるものがない」という人もいます。そういう人こそ、学べるものは何でも学んだら良いのです。

一言コメント

私は「興味がない」ことは、その分野を「よく知らない」ことの裏返しだと思っています。学んでいくうちに、おもしろくなることもありますし、自分が何に興味があるのかがよく分かってくるものです。

大江秋津教授

02卒業研究グローバルスタンダードの考え方を身に付けよう

卒業研究は大学で学んだことを論文という形にするための集大成の作業です。順調にいけば、4年生は授業数が少なくなり、自由時間をたくさんもつことができます。その時間をしっかりと卒業研究に使って、立派な論文を仕上げて欲しいですね。私の研究室では、仮説実証型の研究をしています。研究の第一歩は、仮説を立てることです。しかし、仮説を立てるといっても、思いつきのような仮説では研究になりません。既に発表されている論文をしっかりと読んで、その論文で述べていることなどを引用しながら、説得力のある仮説を考えていく必要があります。ここまでたどりつくのに、たくさんの論文を読む必要があります。
そして、仮説を立てられたら、その仮説を元にデータを集め、分析していくことになります。この過程に一から取り組もうと思うととても大変です。分析には、適切な理論、分析手法の選択が必要になります。しかし、経験の浅い3年生や4年生は、まだ適切なものを選ぶことはできません。
私は元々、仕事を効率よく進めるために、様々な技術を汎用的にする標準化のコンサルタントをしていました。そのノウハウを使って、理論、分析方法、プログラミング方法、研究のノウハウなどは、全員が手順に従えば容易に使えるようになるべく標準化しています。こうすることで余裕ができた時間でまずは一流の論文をたくさん読んだり、論理的に考えたりすることに集中できます。この時期に一流の論文やグローバルスタンダードな考え方にしっかりと触れることで、世界に通用する論理的な思考力が身につきます。
研究の手法が標準化されていても、1人1人の学生の興味の対象や仮説の立て方などの違いで、研究の中身が幅広くなります。しかも、研究手法の標準化により、高いレベルで研究ができるだけでなく、それぞれの学生がお互いにどんな研究をしているのかが理解できるので、活発に議論をしたり、助け合ったりするようになります。そのような過程を通して、学生本人は一つの研究しかしなくても、同時に複数の研究の理解を通じて多様な知識が手に入り、興味の幅が広がるようになっています。

03専門研究一人前の研究者として、知識をより深めていく

大学院に入ってからの専門研究は、研究をするという意味では卒業研究と同じです。しかし、卒業研究よりもはるかに高いレベルの研究が要求されます。大学院に入り、修士の学位を取ると、研究する能力が身についていると見なされます。つまり、経営学の一分野について、まだ誰も知らない事実にたどりつく道を1人で切り開ける能力を身につける必要があるのです。卒業研究では理解できなかった標準化された研究方法の背景について、しっかり理解する必要もあります。
もちろん、大学院でも授業はありますが、どの授業も研究に直結する内容になります。例えば、私の担当している上級経営組織論1では、毎回、経営学の理論の一分野に特化した内容を教え、その分野に関する研究論文を読む宿題を出します。そして、翌週は研究論文について議論をします。この議論では、論文の批評だけではなく、「自分がこの研究を引き継いでやるとしたらどうするか」とか、「自分の研究にどう反映させるのか」といったことまで考えます。その中には、自分が興味のない分野や論文もあるでしょう。それでも、自分のこととして考えることで、柔軟にアイデアを出す訓練をしていきます。
研究の質が高くなるということは、当然、論文の質も高くなる必要があります。修士論文の場合は、良い論文を書くためには、最低でも100本、多ければ数百本ほどの論文を読む必要があります。その中から、自分の研究に使えそうな部分を引用し、仮説や理論を組み立てていくのです。
経営学はまだ新しい学問分野のため、変化が激しい状況です。教科書自体はあるのですが、どうしても内容が古くなります。そのため、論文を読んで自分の頭の中に最新の教科書をつくる必要があります。私も学生と一緒に知識をアップデートしているのですが、どの論文を読むべきかという情報は、研究室で教員や仲間たちと一緒に学ぶことで、自然と身に付いていきます。また、統計分析なども、教科書では表現できないノウハウやテクニックなど、文字や言葉になりにくい知識を、研究を通して得ていくのも、大学院生ならではの学びです。

理科大生手形

経営学系の学習のいい学び、
悪い学びをそれぞれご紹介します!

  • 良い学び

    良い学び

    最初の動機が、「就職に有利だから」というように損得勘定で始めても、自分の好きなことや特性に結びついて、学びや研究が楽しいと思えるようになってくれれば、いい学びにつながると思います。私の研究室でも、英語論文をたくさん読むことが好き、データ集めが好き、分析に熱心に取り組むというように、1人1人の学生の個性や持ち味が出て、お互いに刺激し合っています。得意なところで、不得意なところをお互いに補えばよいのです。

  • 悪い学び

    悪い学び

    学びのきっかけは損得勘定でも良いとは言いましたが、損得勘定だけでものごとを考えてしまうと学びにはつながりません。最近は社会の至るところで効率が求められていますが、研究は必ずしも効率を重視する営みではありません。一歩進んだと思うと、次の瞬間には二歩下がるというように、ときには道を戻り、回り道に思える経験をすることもあります。そうして初めて正しい道を見つけられることが多くあります。損や失敗をしたくない、決まった時間内に終わらせたいという気持ちが強すぎると、結局何も得られないで終わってしまうことになるでしょう。