リカの沼

桃﨑智隆さん
理工学研究科情報科学専攻
修士2年※所属学科、学年は取材当時のものです

あらゆる問題の答えは、「統計学」に通じる!

統計学との出会いで研究の世界に

東京理科大学を知ったのは、高校の数学と化学の先生の出身大学だったことがきっかけでした。また、友人のお父さんがIT系の企業を営んでいたことから、「IT業界ではまだまだ新しいものが登場する」といったワクワク感をもって情報科学科に入学しました。
転機が訪れたのは、大学4年生の頃。当時は研究の道へ進もうとは考えておらず、就職のために統計検定を取得しようと考えました。しかし、統計学の勉強を本格的に始めようとしたところ、予想以上の難しさ……! 自分ではわからないことが多く、誰かに教えてもらおうと思っていたときに、親身に的確なアドバイスをくださったのが情報科学科の中川智之助教でした。
そこからは統計学のあまりの面白さに夢中になり、研究の世界にどんどん引き込まれていきました。私が研究テーマとしているのは、数理統計学と臨床統計学です。数理統計学とは数学を使ってあるデータの中から必要な情報を抜き出す方法を導き出す基礎的な研究です。一方、臨床統計学とは数理統計学でつくられた手法を使って医学的な事象を正しくとらえていく応用研究です。

桃﨑智隆

問題解決のための統計学

統計学の一番の魅力は、「世の中のあらゆる問題に対する答えを導くための手法」であることだと考えています。たとえば、新薬の開発にも統計学が不可欠です。その薬がどのくらいの割合の人に、どのような効果が得られるのか。薬として有効であることのエビデンス、つまり根拠となるものが統計学に基づくデータ解析です。
たとえば近年、「バイアス(偏り)」という言葉がよく使われますが、医師から「この薬はすごく効果がある」と言われれば、患者さんは治っていないのに「治ったかもしれない」と思い込んでしまうことが起こり得ます。そうしたことを防ぐため、医師にも見分けがつかない新薬とそっくりの形をしたプラセボ(偽薬)を使うなど、臨床試験のルールを決める段階から統計の専門家が入ります。新薬が誕生するまでには、臨床試験の組み立てからデータの解析まで、つまり最初から最後まで統計学が重要な役割を果たしているのです。
現在、新しい薬やワクチンの開発が多くの人たちに待ち望まれています。その薬はたしかな効果があり、安全なものでなければなりません。効果のない薬、問題のある薬が出回ってしまわないよう、新薬の開発は多くの課題を根本から解決していかなければたどり着けないものであり、そこには統計学が欠かせません。
新薬の開発はほんの一例であり、統計学は、あらゆる分野に欠かせない学問です。さまざまな場面で問題を根本から正して多くの人の役に立つ「無限の可能性」をもっていることに、統計学の研究に取り組むやりがいを感じています。

桃﨑智隆

クリエイティブさを発揮して、新しい手法を生み出す

近年はビッグデータや高次元データといった言葉をよく耳にすると思います。膨大なデータから必要な情報を取り出して解析するのは機械学習、いわゆるAIの得意分野です。しかし、人の遺伝子情報などお金がかかる、労力が大変といった理由で膨大なデータの取得が難しいものもあります。そんな限られた情報から、精度の高いデータを導き出すための手法を統計学はつくり出しています。「どうすれば制限を突破できるか」――。それには発想の転換が一番重要なところです。いかに、新しい手法を組み立てていくか。そんなクリエイティブさが統計学のたまらない魅力です。
大学院修士課程の1年目は日本統計関連学会連合大会をはじめ、月1回ほどのペースで学会に参加しました。また、「分割表の対称性に関する研究」といったテーマ等で、合計8回の研究発表をしたことが評価され、2020年3月には東京理科大学理工学部情報科学科奨励研究賞をいただきました。発表は緊張しますが、学会は新しい情報をいち早く知ることができる場なので、毎回よい刺激を受けています。懇親会で先生方と話せることも、自分の研究スタイルの確立やモチベーションにつながっています。
ちなみに私は、毎日の生活も統計学によってエビデンスが明らかになった研究に基づいて見直しています。たとえば集中に最適な時間は一人ひとりがもつ時間的なタイミングの傾向=クロノタイプに基づいていることが研究により判明しています。自分は9時から12時までがいちばん集中できる「朝ひばりタイプ」であるため、この時間帯をインプットの時間に充てています。頭をよく働かせるための昼寝や休憩、運動、食事もエビデンスを信用できる研究をもとに決めています(笑)。
いつか現在の技術で解析できないものの問題点を解決し、解明することが目標です。統計学のこの分野といったら自分、と言われるような研究者を目指しています。

沼の外から

中川智之助教

中川智之助教

桃﨑くんは統計学が本当に大好き。学ぶことに貪欲で、僕が見つけた論文を「面白いから読んでみたら」と大量に投げかけると、しっかりと読み込んできてくれます。僕がまだ要旨しか読んでいないものも、彼が詳しく調査してくれるのでありがたいです。新しいことへの探究心がありすぎて、彼自身の研究が捗っているのか心配になることもあります(笑)。