2020.10.14 Wednesday

高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現可能な方法を提案
~計算性能の大幅な向上に寄与、様々な分野での応用に期待~

研究の要旨とポイント
  • ●高速フーリエ変換は画像・音声等のデータ解析などで使用されるアルゴリズムで、物理、工学、医療等の様々な分野における情報処理の基幹をなします。
  • ●本研究では、量子計算と高速フーリエ変換を結び付けた量子高速フーリエ変換を開発しました。これによって高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現可能になります。
  • ●量子コンピュータは大量の情報を同時に処理することができる革新的技術として注目されており、汎用性の高い高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現する方法を提案した本研究は、幅広い分野に強い影響を及ぼすと期待されます。

東京理科大学理学部第二部物理学科の堺和光准教授、浅香諒氏(修士1年生)、矢萩量子助教の研究グループは、量子計算と高速フーリエ変換を結び付けた量子高速フーリエ変換を開発しました。これによって高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現可能になります。画像・音声等のデータ解析などで使用される汎用性の高い高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現する方法を提案した本研究は、物理、工学、医療等の様々な分野に対して強い影響を与えると期待されます。

現在、量子計算を利用した量子情報処理は、大量の情報を同時に処理することができる革新的な技術として期待されています。しかし、フーリエ変換を行う量子アルゴリズムである量子フーリエ変換によって取得できる情報には、加算器や減算器等の量子算術演算回路を施すことができないため、使途が限られるという問題がありました。そこで研究グループは、従来の情報処理の基幹アルゴリズムとして広範に使用されている高速フーリエ変換の量子バージョンを作成することを目指し、研究を行いました。
研究グループは、フーリエ変換に必要な加算や減算等の基本的な演算を量子コンピュータ上で行うための独自の量子算術演算回路を考案しました。この方法の優れた点として、計算の過程で無駄となる量子ビット(Garbage bit)を一切排出しないことが挙げられます。
汎用性の高い高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現する方法を提案した本研究は極めて意義深く、将来的には本研究成果を発展させることで計算性能の大幅な向上が期待できます。


研究の背景

量子計算では、量子力学に固有の「量子もつれ」と「状態の重ね合わせ」を利用することで、大量のデータを並列して処理することができます。多項式時間における整数の因数分解問題を解決したショアのアルゴリズムや、未整序データにおける探索の高速化を可能にしたグローバーのアルゴリズムは、量子計算の驚くべき特性を示す好例として知られています。
フーリエ変換を実装した量子回路は、量子計算において非常に重要な役割を果たすことがあります。実際、量子フーリエ変換はショアのアルゴリズムや量子位相推定アルゴリズムにも組み込まれています。量子力学固有の状態の重ね合わせと量子並列性という特性によって、量子フーリエ変換は高速フーリエ変換よりもはるかに効率的に量子回路に実装できると考えられます。しかし、量子フーリエ変換によって取得できる情報には、加算器や減算器等の量子算術演算回路を施すことができないので、使途が限られます。
そこで研究グループは従来の情報処理の基幹アルゴリズムとして広範に使われている高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現する方法を考案しました。


研究結果の詳細

研究グループは、高速フーリエ変換のためのアルゴリズムとして、いくつかの量子ゲートの組み合わせからなる量子回路を提案しました。この処理系では、データはベクトル空間のテンソル積で表されます。つまり、研究グループが提案した高速フーリエ変換を行う量子回路は、量子状態のテンソル積の変換と定義できます。これは、振幅を量子状態の重ね合わせに変換するいわゆる量子フーリエ変換とは根本的に異なります。
高速フーリエ解析のための量子回路は、加算器、減算器といった量子算術演算回路を可能な限り効率的に実装しました。つまり、研究グループが開発した量子回路では計算の過程で無駄となる量子ビット(Garbage bit)を一切排出しません。
今回提案した手法は、量子フーリエ変換に比べて汎用性が高く、例えば量子画像処理などにおいてはデータストレージ効率も高いという点で優れています。

高速フーリエ変換は、画像・音声等のデータ解析などで使用される汎用性の高いアルゴリズムです。高速フーリエ変換を量子コンピュータ上で実現する方法を提案した本研究は、物理、工学、医療等の様々な分野での応用につながると期待されます。


論文情報

雑誌名 Quantum Information Processing
論文タイトル Quantum circuit for the fast Fourier transform
著者 Ryo Asaka, Kazumitsu Sakai, Ryoko Yahagi
DOI 10.1007/s11128-020-02776-5
堺准教授のページ

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