2019.12.05 Thursday

高性能で安全な蓄電デバイス開発に向けた、新たな電極材料の開発に成功
~導電性ナノダイヤモンドを用いた高性能電気二重層キャパシタの作成~

研究の要旨とポイント

  • 電気二重層キャパシタは二次電池よりも短い時間で充放電でき、寿命も長い一方で、単位質量あたりに蓄えられる電力の量(エネルギー密度)が少ないという問題があります。
  • 本研究では、100nm以下の導電性ボロンドープナノダイヤモンド(BDND)の開発に成功し、電極材料として用いることで、高エネルギー密度かつ高出力密度の電気二重層キャパシタを実現しました。
  • 本研究成果を発展させ、不燃性で毒性のない安全な水系電解液を用いた高性能な電気二重層キャパシタが開発できれば、ウェアラブルデバイスなどに組み込み、IoTの普及に寄与できると期待されます。

東京理科大学理工学部先端化学科の近藤剛史准教授、湯浅真教授らの研究チームは、株式会社ダイセル鄭貴寛氏、西川正浩氏との共同研究により、高エネルギー密度かつ高出力密度を実現できる導電性ボロンドープナノダイヤモンド(BDND)の開発に成功しました。

電気二重層キャパシタ(electrochemical double-layer capacitor; 以下、EDLC)は二次電池に比べ、はるかに短い時間で充放電でき、寿命も極めて長いという優れた特徴がある一方で、単位質量あたりに蓄えられる電力の量(エネルギー密度)が少ないという問題があります。エネルギー密度が小さいと、多くの電力を取り出すためには重量を上げなければならず、軽量化が難しくなります。これに対して、有機電解液を用いることでエネルギー密度を高めるというアプローチもありますが、有機電解質は導電性が低く、生産コストが高いという問題を抱えているため、水系電解質を用いた高性能EDLCの開発が期待されてきました。

本研究では直径100nm以下のBDND(boron doped nanodiamond)を電極材料として用いたEDLCを作成し、電気化学的な解析を行いました。その結果、1MのH2SO4(硫酸)を電解液とする2電極系での測定では、BDNDは1.8Vの大きなセル電圧を示し、それにより高エネルギー密度(10Wh/kg)かつ高出力密度(104W/kg)を実現できることがわかりました。

今回の研究を発展させ、不燃性で毒性のない安全な水系電解液を用いた高性能EDLCができれば、ウェアラブルデバイスなどに組み込むことができ、IoTの普及に寄与できると期待されます。

【研究の背景】

一般的な二次電池は、電極の化学反応によって電荷を蓄えますが、EDLCは「電気二重層」という界面現象を利用して蓄電を行います。電気二重層とは、電解液に固体電極を浸したとき、電解質と固体電極の界面に電位差が生じることによって生まれる、陰極・陽極のそれぞれに陽イオンと陰イオンが吸着した正負の電荷の層を指します。
EDLCでは電解質イオンが溶液内を移動して固体電極に吸着することによって充電し、逆に脱着することで放電するので、電極での化学反応によって電荷を蓄える二次電池に比べ、はるかに短い時間で充電することができ、半永久的に使用できることが大きな特徴です。そのため、EDLCは電子機器の電源が切られても動作し続けるリアルタイムクロック(RTC)やバックアップ電源などに広く利用されています。

しかしその一方、EDLCでは電気は固体電極の表面のみで蓄えられるため、エネルギー密度(単位体積、および単位質量あたりに蓄えられる電力量)が低いという弱点があります。電極の単位質量あたりの表面積(比表面積)を増やすことにより、エネルギー密度の改善がある程度期待できるため、比表面積の大きな活性炭が電極として使用されてきました。しかしそれでもエネルギー密度は二次電池には遠く及ばず、エネルギー密度を高めるための電極材料の開発が求められてきました。
より詳しく言えば、エネルギー密度は静電容量とセル電圧によって決定されています。エネルギー密度を向上させるためには、その両方を高めなければなりません。従来では、分解電圧の高い有機電解液の使用によって大きなセル電圧の印加を可能にする方法が多く採られてきましたが、有機電解液は水系の電解液と比べて導電性が低いこと、生産コストが高いことなどの問題があり、水系電解液を用いた高性能EDLCの開発が期待されてきました。

【開発の詳細】

研究チームは、水系電解質に対して広い電位窓(水が電気分解しない電位範囲)を持つ導電性のボロンドープダイヤモンド(boron-dope diamond; 以下、BDD)に着目し、電極材料として利用することで大きなセル電圧を持つEDLCの開発に取り組みました。

これまでに、研究チームはダイヤモンドパウダーの上にBDDの被覆層を堆積させたボロンドープダイヤモンドパウダー(boron-dope diamond powder; BDDP)を用い、BDDPを用いた印刷型電気化学センサなどの研究を行ってきました1-5)。そして一連の研究から、予想された通り、BDDPの直径が小さくなればなるほど、静電容量が大きくなることを実証しました。それに加え、1MのH2SO4を電解質とする2電極系で電流-電位測定を行った結果、BDDPは1.5V、活性炭は0.8Vと、BDDPでは活性炭と比べてより大きなセル電圧が印加できることが確認されました6)

本研究では、これまでの研究で用いてきたBDDPよりもさらに小さな直径100nm以下のBDND(boron doped nanodiamond)を作成し、比表面積を大きくすることに成功しました。先行研究ではBDD薄膜を破砕することによってBDNDを作成していたのに対し、本研究では、爆轟(ばくごう)法という爆発による高温高圧を利用して生成された直径5nm程度のナノダイヤモンドを基材として、その上にマイクロ波プラズマCVD(chemical vapor deposition、化学気相成長)と呼ばれる蒸着法でBDDの被覆層を付着させることによって、BDNDを作成しました。

固体炭素には導電性のsp2と絶縁性のsp3があり、その比率が材料の果たす機能に大きな影響を与えます。作成したBDNDのsp2およびsp3を透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、及びUVラマン分光による解析から評価した結果、化学反応の過程でsp2の炭素が大量に化学蒸着されていることが明らかになりました。さらに研究チームはsp2炭素の一部は不安定なので熱処理によって除去することができることに着目し、成膜直後の状態のBDNDに熱処理を行って安定なsp2炭素のみを残すことにより、グラフェン(sp2炭素原子の結合によってできた蜂の巣のような構造)をベースとしたsp2炭素構造を含む比表面積の大きな構造を得ることに成功しました。この方法で得られたBDNDの比表面積は658m2/gと、活性炭の半分程度でした。

電気化学的な解析からは、1MのH2SO4(硫酸)を電解液とした場合、作成されたBDNDの静電容量は15.1F/gと、活性炭の20.4F/gに迫るほど大きいことが確認されました。さらに、1MのH2SO4(硫酸)を電解質とする2電極系で電流-電位測定を行った結果、BDNDは1.8V、活性炭は0.8Vと、BDNDが活性炭よりもはるかに大きなセル電圧を印加できることが明らかになりました。
また、高スキャンレート下におけるエネルギー密度の減少も、BDNDでは活性炭よりもはるかに小さく抑えられており、BDNDが高速放充電に適した電極であることが示されました。なお、NaClO4(過塩素酸ナトリウム)を電解液とした場合には、BDNDのセル電圧は2.8Vにまで向上しました。

今回の成果について、近藤准教授は「不燃性で毒性のない安全な水系電解液を用いた高性能EDLCができれば、ウェアラブルデバイスなどに組み込むことができ、IoTの普及に寄与できます。デバイスを大型化できれば、エネルギー回生のための車載用キャパシタとしても利用できます。」として、応用に期待を示しています。

【参考文献】

  1. Kondo, T. et al. Screen-printed diamond electrode: A disposable sensitive electrochemical electrode. Electrochem. Commun. 13, 1546-1549 (2011).
  2. Kondo, T. et al. Enhanced Sensitivity for Electrochemical Detection Using Screen-Printed Diamond Electrodes via the Random Microelectrode Array Effect. Anal. Chem. 88, 1753-1759 (2016).
  3. Nantaphol, S. et al. Boron Doped Diamond Paste Electrodes for Microfluidic Paper-Based Analytical Devices. Anal. Chem. 89, 4100-4107 (2017).
  4. Kondo, T. et al. Effect of Substrate Size on the Electrochemical Properties of Boron-doped Diamond Powders for Screen-printed Diamond Electrode. Chem. Lett. 47, 1464-1467 (2018).
  5. Kondo, T. et al. Boron-Doped Diamond Powder as a Durable Support for Platinum-Based Cathode Catalysts in Polymer Electrolyte Fuel Cells. J. Electrochem. Soc. 165, F3072-F3077 (2018).
  6. Kondo, T. et al. Boron-doped Diamond Powders for Aqueous Supercapacitors with High Energy and High Power Density. J. Electrochem. Soc. 166, A1425-A1431 (2019).

※本研究は、以下の助成を受けて実施したものです。

  • JST A-STEP 機能検証フェーズ 「革新的蓄電デバイスへの応用を目指した導電性ナノダイヤモンドパウダーの開発」
  • 科研費・基盤研究(C)「導電性ダイヤモンド粒子の機能化と水系電気二重層キャパシタへの応用」(No. 19K05064)

【論文情報】

雑誌名 Scientific Reports 2019年11月28日 オンライン掲載
論文タイトル Boron-doped Nanodiamond as an Electrode Material for Aqueous Electric Double-layer Capacitors
著者 Kenjo Miyashita, Takeshi Kondo, Seiya Sugai, Takahiro Tei, Masahiro Nishikawa, Toshifumi Tojo, and Makoto Yuasa
DOI https://doi.org/10.1038/s41598-019-54197-9

近藤研究室のページ
研究室のページ:https://www.rs.noda.tus.ac.jp/~yuasalab/top.html
近藤准教授のページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?43bc
湯浅教授のページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?1152

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