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2019.05.08 Wednesday

【続報】真核生物の細胞の自己複製能力の起源を解き明かせるか? ―真核生物の進化の鍵を握る可能性のある新種の巨大ウイルス『メドゥーサウイルス』 研究チームが新作動画、グラフィクスを発表―

東京理科大学(学長:松本洋一郎)はこのほど、同大学理学部教養学科の武村政春教授、京都大学化学研究所の緒方博之教授・吉川元貴大学院生らにより本年2月に発表された新種の巨大ウイルス「メドゥーサウイルス」について、新規の解説動画および解説グラフィクスを制作・公開いたしました。

武村教授らの研究グループは、北海道にある温泉地域の湯だまりとその水底の泥土のサンプルから、アメーバに感染する新種の巨大ウイルスを発見し、2019年2月に米国の国際学術誌『Journal of Virology』に発表しました。このウイルスは、感染の過程で一部のアメーバの細胞を、厚い皮を被った休眠状態(シスト)に変えて休眠させる特徴を持っており、その様子が見たものを石に変える能力を持つというギリシア神話の怪物「メドゥーサ」をイメージさせることから「メドゥーサウイルス」と命名されました。

ウイルスは、バクテリアから動植物、人類、極限環境に生息している微生物まで、あらゆる生物に感染します。DNAまたはRNAがタンパク質の膜で覆われた構造で、自分の遺伝情報を自分で複製し、タンパク質を合成するための機構を持っていないため、感染した宿主の細胞が持つ複製機構・タンパク質合成機構を言わば「乗っ取る」形で自己複製して増殖します。メドゥーサウイルスは、粒子の直径が260ナノメートル、ゲノムの長さが38万塩基対で、これまでに記録されている巨大ウイルスの中では比較的小型の巨大ウイルスです。二本鎖のDNAを持つ「DNAウイルス」で、他のウイルスとは違い、DNAを核の内部で折りたたみ、遺伝子の発現を調節しているタンパク質「ヒストン」に関する遺伝子を全セット持っていることが確認されています。ウイルスが核を持たないことを考えると、核に関連する遺伝子を持っていることは不自然に思えます。しかも、分子系統解析を用いてヒストン遺伝子の進化を調べてみたところ、この遺伝子の起源は、真核生物の共通祖先の登場よりも更に古いことがわかりました。このことは、真核生物の祖先がヒストン遺伝子を、古代のウイルスから獲得した可能性を示唆しています。

メドゥーサウイルスのアメーバ"石化"メカニズムはわかっていませんが、アメーバはメドゥーサウイルスの殻をつくる遺伝子を自分のゲノムの中に取り込んでいて、アメーバとメドゥーサウイルスの間では、進化の過程で双方向的な遺伝子のやり取り(遺伝子の水平伝播)が何度も行われてきたと考えられています。

メドゥーサウイルスの命名者である東京理科大学の武村教授はこのことについて、「巨大ウイルスのゲノミクス研究は、メドゥーサウイルスと真核生物の起源との間に関連性がある可能性を示している」と語っており、共同研究者の吉川博士も、真核生物のDNAの複製に関わるタンパク質が「メドゥーサウイルス、またはその近縁種に由来する可能性がある」と説明しています。今後の研究によって、真核生物が持つDNA複製能力の起源に対する理解が更に進むと期待されています。

新規制作の動画、グラフィクスでは、メドゥーサウイルスの特徴と、アメーバとの間で起こる遺伝子の水平伝播について解説し、メドゥーサウイルスの発見が生命進化史の解明にどう役立つのか、最新の研究成果をご紹介します。

【論文情報】
雑誌名:Journal of Virology2019年2月6日オンライン掲載論文タイトル:Medusavirus: A Novel Large DNA Virus Discovered in Hot Spring Water著者:Genki Yoshikawa, Romain Blanc-Mathieu, Chihong Song, Yoko Kayama, Tomohiro Mochizuki,Kazuyoshi Murata, Hiroyuki Ogata, Masaharu TakemuraDOI:10.1128/JVI.02130-18

【オリジナルプレスリリース】
『ヒストン遺伝子を全セット持つ巨大ウイルスの発見―DNA 関連遺伝子のウイルス起源に新たな証拠―』(2019年2月7日)

【新規制作動画】
"Medusavirus, a Novel Large DNA Virus Discovered from Hot Spring Water"『メドゥーサウイルス:温泉水から発見された、新規の巨大DNAウイルス』(英語動画、日本語字幕) https://youtu.be/-SVisX4ry5o

【新規制作グラフィクス】
『事実は神話より奇なり――生命進化の謎を解く鍵を握る巨大ウイルス、メドゥーサウイルス』

【続報】真核生物の細胞の自己複製能力の起源を解き明かせるか? ―真核生物の進化の鍵を握る可能性のある新種の巨大ウイルス『メドゥーサウイルス』 研究チームが新作動画、グラフィクスを発表<br />―

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