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2020.01.08 Wednesday

免疫微小環境を形作る支持細胞に分化可能な間葉系前駆細胞の特定と培養法の確立

研究の要旨

    東京理科大学生命医科学研究所の後飯塚僚教授等の研究グループは、脾臓の免疫微小環境を構成する様々な支持細胞に分化可能な間葉系前駆細胞を特定し、その培養法を確立しました。
    本研究成果はScientific Reports誌に2019年12月31日付けで掲載されました。
    本研究成果は日本学術振興会、文部科学省の科研費を受けてなされたものです。

【研究の背景】

ウイルスや細菌に対する免疫反応が起こる脾臓やリンパ節などには、免疫細胞の活性化や機能的分化を制御する特殊な支持細胞が存在し、その環境の構築や形成に関わっています。例えば、平常時には、抗体を産生するB細胞とそれを助けるT細胞は隣接する個別の領域に存在しますが、感染時にはそれぞれが移動することで胚中心などの新たな免疫反応の起こる場を形成します。これらの免疫細胞の局在や移動は支持細胞から分泌されるケモカインによって制御されていることも明らかにされています。しかしながら、これら支持細胞の起源、由来や性状については明確になっていませんでした。

【研究成果の概要】

脾臓の器官形成に必須の転写因子であり、また、その変異が無脾臓症の原因にもなるTlx1の遺伝子発現の認められる細胞を指標にして、新生児脾臓の間葉系細胞を解析したところ、Tlx1遺伝子を発現している細胞は脾臓以外の組織では観察されず、今まで知られている支持細胞とは異なる特徴を有する細胞であることが判明しました。この細胞は一定の条件で培養すると脂肪細胞、骨細胞および軟骨細胞に分化できる能力を持ち、また生体で細胞系譜追跡という実験を行うと、既知のリンパ組織特有の支持細胞に分化することから、脾臓特有の間葉系前駆細胞であることが示されました。このTlx1遺伝子発現細胞は通常のプラスチックシャーレを用いた二次元培養では維持することが出来ず、その機能や性状をより詳細に解析することが不可能なため、新たに三次元培養法を開発しました。この三次元培養法で維持可能となったTlx1遺伝子発現細胞は腫瘍壊死因子やリンフォトキシンなどの刺激で、B細胞あるいはT細胞を誘引するケモカインであるCXCL13やCCL19を産生する濾胞樹状細胞や線維性細網細胞に分化することが明らかになりました。Tlx1は胎児期の脾臓原器にも発現しており、脾臓の分化運命を決定する転写因子として機能することから、以上の結果は、胎児脾臓に由来する間葉系細胞が生後も免疫微小環境を形作る様々な支持細胞の前駆細胞として維持されていることを示唆しています。

【今後の展望】

今回、脾臓の免疫微小環境を形作る支持細胞は脾臓固有の間葉系前駆細胞であり、それは胎児期から生後に渡って維持されていることが明らかになりました。さらに、その細胞を支持細胞への分化能を保ったまま維持できる三次元培養法の開発に成功しました。特に、この培養システムの開発は、リンパ節などの脾臓以外のリンパ組織環境を構成する支持細胞との機能や性状の比較に応用できるだけでなく、支持細胞の大量培養法へと更なる技術改変を行うことによって、リンパ組織再生・新生による免疫増強治療法の応用も期待できると考えられます。

【発表雑誌】

雑誌名 Scientific Reports
論文タイトル Transcription factor Tlx1 marks a subset of lymphoid tissue organizer-like mesenchymal progenitor cells in the neonatal spleen
著者 Yuta Ueno, Keiko Fujisaki, Shoko Hosoda, Yusuke Amemiya,
Shogo Okazaki, Chihiro Notsu, Chiharu Nishiyama,
Yo Mabuchi, Yumi Matsuzaki, Akihisa Oda and Ryo Goitsuka
DOI https://doi.org/10.1038/s41598-019-56984-w

後飯塚 研究室のページ:https://www.ribs.tus.ac.jp/index.php/course/labforstu/goitsukalab/
後飯塚 教授のページ:https://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?28d0

<本研究内容に関するお問合せ先>
東京理科大学 生命医科学研究所 教授 後飯塚 僚
Tel: 04-7121-4102
e-mail:ryogoi(アットマーク)rs.tus.ac.jp (アットマーク)を@に変更してください。

<当プレスリリースの担当事務局>
東京理科大学 研究戦略・産学連携センター(URAセンター)
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3
Tel:03-5228-7440
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