教養教育センター後援「ヴィクトリア朝文化特別セミナー」を開催(6/10)

2019.06.12

6月10日(月)に神楽坂キャンパスで、教養教育センター後援「ヴィクトリア朝文化特別セミナー」が開催され、一般、本学教職員・学生合わせて7人の参加がありました。

松本委員(理工学部教養教授)による開会挨拶に続き、まずClare Pettitt教授からセミナーのテキストとしてJesse Oak Taylor著 The Sky of Our Manufacture (2016)を選択した経緯とエコ・クリティシズム全般についての説明があり、「同じ文学作品であっても時代によって驚くほど研究アプローチや解釈が変わる。私が学生の頃は専らフェミニズムやジェンダー論の観点から作品を読んだ。今の英米の学生は〈人類が滅亡に向かっている〉という危機意識が非常に高く、Climate Fiction というジャンルが注目を集めてもいる。台風や震災など多くの災害に見舞われることの多い日本ではどうか。」という問いかけがなされました。続いてKate Flint 教授からは、「私たちはTaylorの主張に全面的に賛同しているわけではないが、彼が提供しているabnature(純然たる自然ではなく、人間の営みと複雑に絡み合った相互作用としての「自然」)という概念は、私たちが現代世界を考えるうえで非常に有効である。今日は、この概念を鍵に私たちがヴィクトリア朝や現代の文学・芸術に切り込んでいった場合、どのようにこれまでとは違った風景が見えてくるか一緒に考えていきたい。」という呼びかけがありました。

上記のような講師陣からの問題提起(30分程度)の後、休憩なし、発言の途切れもなしに制限時間ぎりぎりまで活発な議論が繰り広げられました。現代の私たちが環境問題と呼ぶものを人類で最初に本格的に引き起こし、直面せざるを得なかったのがヴィクトリア朝(1837-1901) の英国です。今回のセミナーで改めて確認できたのは、「自然」自体が人的活動との混成物でしかあり得ない「人新世(Anthropocene)」において、政治、経済、社会、科学、芸術など人類の営み全てが複雑に絡み合っており、局所に焦点をあてた専門的な分析のみによって正確な知見を得ることは難しいということでした。学問分野の垣根を横断する協同作業が必須になるゆえんでしょう。これは昨年度、教養教育センターのキックオフシンポジウムの際、基調講演をいただいた小林傳司先生がご著書で取り上げておられる「トランス・サイエンス」という論点にも通じる問題です。

参加者からは、「傑出した国際的研究者2名と意見を交わすことができ有意義だった。この機会を与えてくださり感謝します。」、「もっと話していたかった。他にもこのようなセミナーがありましたら是非また参加したいです。」などの感想が寄せられました。他キャンパスや学外からの多くの参加を見込んでいましたが、あいにくの激しい雨の影響もあったのでしょうか、参加者が少なかったのは残念です。その分、出席者間の距離が近くなり、全員漏れなく発言し、討議に積極的に加わっていただけました。「日本人はあまり発言しないと聞いていたが、今日はとても反応がよかった」と講師陣も満足顔でした。