工学部教養 愼教授がおすすめする本

紹介者
氏名:愼蒼健 教授
所属:工学部教養(教養教育センター長)
専門:科学史/東アジア医学史/科学論

 

本のタイトル等 この本をおすすめする理由
書籍名 :完全な真空
著者名 :スタニスワフ・レム
出版社名:河出書房新社、2020年(初版は1989年)
<存在しない書物>の書評集。仕掛けは目新しくないが、これほど面白い本に出会うことは滅多にない。大学時代、最も刺激を受けた本の一つであることは間違いない。
書籍名 :羊をめぐる冒険
著者名 :村上春樹
出版社名:講談社、1982年
「僕」が「鼠」に「君はもう死んでいるんだろう?」と聞くシーン。高校生の頃に読んだ、そのページのセリフを今でもほぼ完璧に覚えている。
書籍名 :ペスト大流行—ヨーロッパ中世の崩壊—
著者名 :村上陽一郎
出版社名:岩波書店、1983年
一つぐらいは科学史から本を。
大学から大学院に進学する時期だったと思うが、「メメント・モリ」(「死を忘れるな!)という中世の格言を初めて知り、同時に村上陽一郎さんの本をここから読み漁った。そして、彼は私の大学院時代の指導教員となった。数値化される死から死者を救い出せ!
書籍名 :これが人間か
著者名 :プリーモ・レーヴィ
出版社名:朝日新聞出版、2017年(旧版は1980年)
私の書棚の中で、圧倒的な存在感を示し、「オレはここにいる」と主張している本。
イタリアのトリノ大学で化学を専攻した著者は、1944年2月にアウシュヴィッツに送られ、収容所で生活する「顔のない人間」たちを見る。「これが人間か」。だが、私にとって最も印象的な描写は、「オデュッセウスの歌」という章で、レーヴィがダンテ『神曲』の「地獄編」第26歌を穴だらけの記憶の底から拾い上げ、アルザス出身の学生ジャンに語るシーンである。それは、生き地獄の中で「これが人間だ」と肯定できる奇跡の時間。
「徳と知を求めるため、生をうけたのだ」。この本を読むと、この言葉の意味を実感することができる。そして、どうしても『神曲』が読みたくなる。