基礎工学部教養 村上准教授がおすすめする本

紹介者
氏名:村上学 准教授
所属:基礎工学部教養
専門:哲学/倫理学

 

本のタイトル等 この本をおすすめする理由
書籍名 :カササギ殺人事件
著者名 :アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭 (訳))
出版社名:東京創元社(創元推理文庫)、上下巻、2018年
「もはや探偵は現れない」とも言われる現代。トリックは出尽くし、密室は分類された。さらに科学技術の発展が犯人の奇想天外な魔法的仕掛けをバカバカしくしてしまう。そうした時代に対する現代文学の答えの一つがこれだ。死を宣告された探偵。なんと象徴的な設定だろう。クリスティへのオマージュがこれでもかと散りばめられ、最良のスピンオフでもある。文学技術の粋を結集させた、2019年数々の賞を受賞した作品。
書籍名 :ドリトル先生
航海記 他(シリーズ)
著者名 :ヒュー・ロフティング(井伏鱒二(訳))
出版社名:岩波書店(新版)、2000年
中途半端な科学的知識が物語的想像力の面白さを損なう前に読んで欲しい。動物の権利などとほざく前に、「先生」がペットショップの前を通れない理由に微笑んで欲しい。エディ・マーフィー主演の映画なんか観る必要はない。素敵な挿絵と文章だけで思い浮かべるだけで十分だ。動物と話せたらどんなに素敵だろう。路地裏の猫だけでなく、ゴミを漁るカラスにさえ優しくなれるかもしれない。
書籍名 :ゴルギアスからキケロへ (人でつむぐ思想史)
著者名 :坂口ふみ
出版社名:ぷねうま舎、2013年
いつかこんな文章を自分の専門分野で書いてみたい。そう思わせられた本の一つ。
今や多くの人が思想を信じていない。人々を混乱させる言葉、傷つける言葉、根無草な空疎な言葉、そんな言葉とも言えない言葉ばかりが溢れる現代。僕らは言葉とどうつきあってきたのか、思想が根差す場所はどこであるべきか、「言葉の技術」の始まりの歴史とともに考え直してみたい。そして同時に、深い専門性と、時間的にも空間的にも思想的にも幅広い教養とを一つにしていく、その技をも楽しみたい。
書籍名 :空の名前(改訂版)
著者名 :高橋健司(写真・文)
出版社名:KADOKAWA、1999年
僕らは自分を紹介するのに名前を名乗る。名前を知ることはその人を「知る」最初の一歩であると同時に全てでもある。名前を知るとその人の見え方が「ただの人」から中身のある独立した独特の特別な存在者になる。そんなことを空を眺めながら考えてしまう、そんな本。空の見え方が違ってくる。晴れ、曇り、雨と、3種類しか知らないなんてなんとも教養のない。そう、教養は世界の見方を変えるのだ。これはそんな本。
書籍名 :Masterキートン
著者名 :浦沢直樹、勝鹿北星(長崎尚志)
出版社名:小学館(ビックコミックス)全18巻、1988~(完全版(全12巻)2011~)
学生の必読漫画にしたい。何より謎を解く旅に出たくなる。主人公キートンは、特殊部隊の元教官(マスター)であり、学位(マスター)を持つ考古学者であり、そして探偵である。行方不明者や犯人探し、歴史探訪、冒険、そして仮説の立証。多様なQuestが心優しい物語の中で重なっていく。学者は壮大な仮説の答えを求めて冒険し、一つ一つ謎を解いていく有能な探偵でなければならない。反面、文系の人間には復縁したい元奥さんが数学者という設定に苦笑い。副産物として大学の先生がちょっとエラそうに見えるのにはニンマリだ。