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2013(H25).10.17vol.191TUSJournal入社2年目で、富士重工業とトヨタ自動車初の共同開発となったスバル「BRZ」とトヨタ「86」のエンジン開発に携わり、現在はインプレッサのエンジン研究・実験グループに所属する細野さん。社を代表する車の心臓部をつくり続けている彼女の原点は、高校時代にさかのぼる。「高校3年生の時に、ものの現象をすべて証明できる物理が好きになりました。『物理を学べば、どんなものづくりにも生かせる』という先生の言葉が心に残っています。燃料電池のことを知ったのもそのころで、排気ガスが出ず環境に悪影響を及ぼさないことに驚いて、大学では燃料電池の研究室に入ろうと決めていました。ただ大学では基礎研究を行っていたため、実際に研究成果が世に出て役に立つのは30年、40年先。就職時には、成果が目に見えて感じられる開発職に就きたいと思っていました」燃料電池の研究に携わったことで、自動車会社に興味を抱き、富士重工業に就職。ただ自動車そのものに特別興味があったわけではなく、運転免許も入社直前に取得したほどだった。「会社は新人、ベテラン、男女の区別なく仕事を与えてくれる気風があって、知識が不足していても、業務を通して学べば良いというスタンスだったので、気後れするようなことはまったくありませんでした」入社して以降、ずっとガソリンエンジンの開発に携わり、大学で学んだ燃料電池の知識を生かす場面はまだないが、大学で得た学びの姿勢は、仕事に対する姿勢と共通で、大いに生かされていると感じている。「論文は期日が決められているので、それに向けて目標を達成しなければいけません。想定通りに結果が出なかったり、装置が壊れたり、くじけそうになることが度々ありましたが、諦めない姿勢を身に付けることができました。期日までに目標を達成する必要があるのは、職場でもまったく同じです。目指すハードルは高いですが、それでもめげずにやっていけるのは、大学での経験が生きているからだと思います」女性は2人だけという現在の部署だが、女性技術者の視点は開発にも重要と考えている。「製品を購入するとき、家計を握っている女性の意見が反映されることが多いのではないでしょうか。女性の目線で商品が選ばれるのなら、開発の現場にも、もっと女性の視点が入った方がより良いものが生まれるのではないかと思っています」細野さんの次の目標は、開発提案ができる技術者だ。将来的には、大学で勉強した燃料電池を使った排気ガスゼロのクリーンな自動車の実現を夢みている。03いつか、女性が乗りやすいクルマを開発したい“理系”の未来も将来の選択肢に真夏のマドンナ諏訪理科大で開催!4年制大学の理系学部における女子学生の割合は約3割。徐々に増えているとはいえ、未だ少ないのが実情だ。「もっと女子中高生に視野を広げてもらい、将来の選択肢を考える際の手助けとなりたい」と、活動をしているのが、「リケチェン!」だ。主な活動は三つ。一つ目は、社会で活躍する理系女性の仕事内容や、やりがいを理系女子の目線でインタビューし「リケチェン!ブログ」で掲載すること。二つ目は、理系大学生や社会人と、女子中高生たちが気軽に話すことができる場を設ける「女子会」活動。三つ目として、受験勉強に関する話やサイエンス豆知識など、女子中高生が興味を持ちそうな理系情報をブログに掲載したり、ツイッターやフェイスブックなどのSNSを使ってイベント等の情報を発信するなどの活動を行っている。大学が主催する「科学のマドンナ」プロジェクトでも、「リケチェン!」は大きな役割を果たしている。8月に開催された「真夏のマドンナ」では、さまざまな企画を提案。2泊3日のスケジュールの中で、高校生に充実した時間を過ごしてもらうため、トークセッションや大学の校舎を使ってのクイズラリー、バーベキューなどを行い、スタッフとして高校生に寄り添って過ごした。「『一緒にひと晩中話していたい』と言われたり、参加者とLINEのグループを作ったりと、高校生とかなり打ち解けることができ、うまくサポートできたのではと思っています」と、代表の北畠早紀さん。「リケチェン!」パンフレットに書かれていた「自分自身も大きく成長できる環境です」との言葉に感化され活動に参加。授業、実験、バイト、サークルにいそしみながら活動に積極的に関わってきた。「わたしも高校生の時は、生物に興味があるというだけで、理系に進んだときの将来像を具体的に考えられませんでした。理系と言っても理学、薬学、工学等、学ぶ分野はさまざまだし、同じ分野を選んだとしてもその先の進み方、社会での活躍の仕方は何通りもある。そういうことをもっと知ってもらって、進路の選択肢を増やしてもらいたいです」先輩の数が少なく、あまり身近に感じられないリケジョの生の声を、今後もっと発信していく予定だ。クルマ好きの心をつかむ、スバルのエンジンを開発する細野紘世さん。女性の少ない現場で活躍する細野さんに、仕事への姿勢について伺いました。本学の学生を含む現役女子大生が、女子中高生の視野を広げるための活動を行っているリケチェン!。代表を務める北畠さんにその活動内容について伺いました。細野紘世さんインタビュー北畠早紀さんインタビュー細野さんがエンジン開発に参加したスバルインプレッサと、そのエンジン「科学のマドンナ」プロジェクトの一環である、「真夏のマドンナ」が、8月7日(水)から9日(金)に諏訪東京理科大学(長野県茅野市)で行われました。今回のイベントでは、本学の学生等で構成された学生団体「理系女子開発プロジェクトリケチェン!」が全面協力。全国から集まった総勢47人の女子高校生たちへのサポートを行いました。2泊3日の日程の中では、諏訪理科大の河村学長の講演や、「電気を作る!〜ユビキタスパワーステーション〜」「正多面体を作ってみよう」などの模擬授業、実験体験などが行われました。また、霧ケ峰高原自然散策といった諏訪ならではのレクリエーションを通し、参加者たちは充実した時間を過ごしたようです。参加した高校3年生の女子生徒は「進路に迷っていましたが、行きたい学科の先輩からたくさんお話を聞けて、東京理科大学に行きたいという気持ちが強まりました」と感想を話してくれました。富士重工業株式会社パワーユニット研究実験第1部エンジン研究実験第2課学生団体リケチェン!代表基礎工学部生物工学科4年madonnaflemadonnafle細野紘世(ほその・ひろよ)2007年、理学部第一部応用物理学科卒業。2009年、理学研究科物理学専攻修士課程修了。富士重工業株式会社に入社。スバル技術本部パワーユニット研究実験第1部エンジン主査グループに配属。現在に至る。リケチェン!とは東京理科大学生を中心とした現役女子大学生が運営する、学生団体。団体名の「リケチェン!」には「理系女子のイメージをチェンジしていく」という意味が込められている。理系の女子大生が現役の立場から、女子中高生に向けて、理系の魅力や実態を伝え、進路に悩む女子中高生を全力で応援している。