2017.11.14 Tuesday

本学大学院生が日本食品免疫学会においてポスター賞を受賞

本学大学院生が日本食品免疫学会においてポスター賞を受賞しました。

受賞者 基礎工学研究科 生物工学専攻 修士課程2年 藤垣 泉
指導教員 基礎工学部 生物工学科 教授 西山 千春
受賞題目 吉草酸、酪酸、ナイアシンはGPR109aを介してマスト細胞依存性アレルギー炎症を抑制する
受賞内容 腸管内に生息する微生物がヒトの健康維持に貢献していることがよく知られています。共生している腸内細菌はヒトにとって難消化性の食物繊維をエネルギー源として利用可能なレベルに分解すると同時に短鎖脂肪酸群(SCFAs;主に酢酸、プロピオン酸、酪酸を指す)を産生します。SCFAsが腸管上皮細胞や腸内に局在する様々な免疫系細胞に作用して、過剰な免疫反応を抑え恒常性を維持する機構が明らかになってきています。一方、白血球細胞の一種であるマスト細胞は全身に分布し、アレルギーの原因物質(アレルゲン)などに反応して活性化することによって、花粉症の場合はくしゃみやかゆみ、食物アレルギーでは下痢などの症状を引き起こしますが、マスト細胞に対するSCFAsの作用は不明でした。
そこで、藤垣さんは、マウスのマスト細胞を用意し、アレルゲンとIgE抗体でマスト細胞を活性化させた際に、SCFAsがどのような作用を及ぼすか調べました。その結果、ほとんどのSCFAsがヒスタミンなどを放出する脱顆粒反応を抑えましたが、特に「酪酸」と、いわゆるSCFAsより鎖長の長い「吉草酸」が、脱顆粒反応を最も強く抑制することを発見しました。さらに、慢性的なアレルギー炎症に関与するサイトカイン産生も抑えられることを確認しました。吉草酸を経口摂取していたマウスでは、全身的なアレルギー反応であるアナフィラキシーが有意に緩和されたことから、生体に意義のある効果であると考えられます。様々な阻害剤や特定の遺伝子のノックダウンやノックアウトを組み合わせて詳しく調べた結果、吉草酸はGタンパク質共役型受容体、特にGPR109Aに作用し、それによってマスト細胞はプロスタグランジンや抑制性のサイトカインIL-10を分泌して自身の活性化を抑制する仕組みが明らかになってきました。GPR109AはビタミンB3(ナイアシンとも呼ばれる)の受容体でもあるため、ビタミンB3についても試したところ、脱顆粒やアナフィラキシーに対する抑制効果が認められました。プロスタグランジンの質や量は、多価不飽和脂肪酸(ω-6脂肪酸のリノール酸やアラキドン酸、ω-3のα-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸など)の影響を受けるため、油の組成もアレルギーの病態に関わる可能性があります。
今回の研究によって、食物繊維や短鎖脂肪酸、ビタミン、多価不飽和脂肪酸といった日常的に摂取する食品成分がアレルギーの病態に関わる分子機構の一端が明らかとなりました。
受賞日 2017年11月10日

日本食品免疫学会のページ:http://www.jafi.jp/

西山研究室
研究室のページ:http://www.rs.tus.ac.jp/chinishi/
大学公式ページ:http://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/index.php?6821

 

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