研究部門・研究センター等の紹介

未利用熱エネルギー変換研究部門

部門長  基礎工学部 材料工学科 教授 西尾 圭史 
研究内容 熱.電気直接変換技術によるエネルギー利用効率向上に向けた排熱再資源化 
目的 地球温暖化への迅速な対応として300~600℃の排熱を利用付加価値の高い電気エネルギーに変換する環境低負荷・生体適応型で、かつ10%以上の変換効率が期待される次世代熱電変換材料および発電システムの開発 
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【研究成果ハイライト2016】

地球環境温暖化の主因である温室効果ガス排出の削減には今後積極的に取り組む必要があります。すぐに化石燃料の使用を止めることはできませんが、まずは化石燃料の消費を抑えることが重要です。今後のエネルギー源として太陽光発電や風力のような再利用可能エネルギーの導入は重要ですが、それだけでは十分ではなく、排熱 (廃熱) に代表される未利用熱エネルギーの積極利用が求められています。
その点でエネルギーの消費先において、供給されているエネルギーを今以上に高効率に利用する既存エネルギーシステムの改善が必要であり、この取り組みは時として新エネルギーの導入と同様に、あるいはそれ以上に環境負荷を低減させることにつながることがあります。
熱サイクルを使用するシステムでは、カルノーサイクルによる制約や、変換・輸送の損失で全体のエネルギーのおよそ70%は排熱として未利用のまま捨てられています。この熱を回収し再エネルギー化できればよいのですが、こうした排熱は低品質で、環境との温度差が比較的小さく再度熱機関に利用するのは難しくなります。高効率エネルギー利用においては、エネルギーの最終形態である「排熱 (廃
熱)」をいかに有効利用するかがエネルギーの利用効率を決定するといっても過言ではありません。現状でも部分的には排熱のエネルギーリユース(コジェネレーション)はなされていますが、十分ではありません。
排熱は重要なエネルギー資源であり、未利用熱を利用価値の高い電気エネルギーに再資源化する排熱-電力変換技術の確立は、エネルギー利用効率の向上による温室効果ガスCO2 (二酸化炭素)の削減に不可欠な要素技術なのです。未利用熱エネルギーを現代社会で最も使いやすい電気エネルギーに変換する熱-電気変換(発電)は現代社会において重要な位置づけといえます。高性能な熱.電気(熱電)変換材料の実現には「金属の電気伝導」と「絶縁体の熱伝導」の2つの要素が求められます。金属と絶縁体の両方の性質を併せ持つ材料とは?と考えると「あり得ないのでは」と思われるかもしれませんが、実は材料の特殊な結晶構造や半導体材料への不純物導入という手法により、一見矛盾する2つの条件「金属と絶縁体の特性」を共存させられる材料があるのです。
様々なエネルギー熱電変換材料を探索する中で、私達は、「資源豊富」で「無毒」な熱電変換材料に照準を定めました。いわゆる環境低負荷半導体とよばれる材料です。熱電半導体材料の世界では、従来は性能さえでれば、アンチモン(Sb)、砒素(As)、セレン(Se)、テルル(Te)、カドミウム(Cd)など毒性のある物質を使うことがある程度社会的に許容されていました。しかし、EU 委員会による2006年7月からのRoHS (Restriction of Hazardous Substances)指令と2007年6月からのREACH(Registration, Evaluation, Authorisation ofChemicals)規則では、有害物質あるいは有害化危惧物質への使用制限が強化されました。従来からの中高温向け主力熱電発電材料の一つである鉛-テルル(Pb-Te)系の発電モジュールは、これまでRoHS指令適用除外の扱いでしたが、
EU委員会は2019年1月以降Pb-Te系発電モジュールの使用を禁止しました。有害物質あるいは有害化危惧物質の使用制限の方向性は今後さらに厳しくなることが予想されます。
排熱発電技術は、化石燃料の使用で大量に排出される「排熱」を現代社会で最も利用しやすい電気エネルギーとして再利用 (再資源化)することができ、最終的なエネルギー利用効率を高め、CO2を削減できる技術の一つであるため、現在非常に注目されています。
エネルギーの安定供給、地球温暖化への迅速な対応に向けて、エネルギー利用効率の向上が強く望まれている中、化石燃料に依存した現在のエネルギーシステムにおいて、排熱の再資源化はエネルギー利用効率の改善に極めて重要な技術となっています。
現在、300~600℃の排熱を利用付加価値の高い電気エネルギーに変換する環境低負荷・生体適応型で、かつ高い変換効率(10%以上)が期待される次世代環境低負荷型熱電変換材料の開発が行われています。排熱発電の重要な用途として自動車がありますが、欧州では2025年に極めて厳しい自動車向けCO2排出規制が導入されます。また、途上国での爆発的な自動車需要の増加は従来エンジンによるものが大多数であり、2030年時点でも生産台数のおよそ90%が燃焼系のエンジンを搭載すると予測されています。こうしたことから、自動車向け排熱再資源化へのニーズは近年極めて大きいものとなりつつあります。

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今後の展開

実用向けシリサイド系(Mg-Si、Mn-Si)、Si系、Zintl系および酸化物系環境低負荷型熱電変換材料および発電モジュールの技術開発

部門長からのコメント

化石燃料約70%は排熱として捨てられています。高効率エネルギー利用においては、エネルギーの最終形態である「排熱」をいかに有効利用するかが重要です。私たちは排熱を利用価値の高い「電気エネルギーとして再資源化する」ことで、化石燃料の使用総量を減らし、全体としてのCO2排出の削減を目指しています。

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