※内容は「東京理科大学報」 vol.205 掲載時のものです。

大学での学びを通じて高い専門性を獲得し、
さらにグローバルな視野を身に付けてほしい

「生徒の成長を第一に」改革を続ける“異色”の校長
東京都立日比谷高等学校 校長
1987年理学専攻科物理学専攻修了

武内 彰さん

東京都立日比谷高等学校 校長
1987年理学専攻科物理学専攻修了
1987年、東京理科大学理学専攻科物理学専攻修了。同年以降、物理の教師として都立高校の教壇に立ち、都立西高等学校副校長などを経て、2012年(平成24年)より現職。共著に『楽しくわかる物理100時間』上・下(日本評論社)などがある。

都立日比谷高校に校長として着任して5年。
武内さんは、校長としての本来業務のほかにバドミントン部の顧問を務め、さらに講習の教鞭も執っている。

「とても忙しいです。でも、とても楽しいですよ」
 そう語る表情は、ポジティブなエネルギーに満ちている。創立130年を超える伝統校では、武内校長のリーダーシップのもと、若い教員たちから新しいアイデアがつぎつぎと生まれ、実践が始まっている。
 着任以来、武内さんが注力しているのが人材育成だ。そこには、「生徒の成長を促すためには、授業の質を高めることが不可欠」との思いがある。同校の教員は専任が54人、非常勤を含めると70人以上となる。武内校長は、すべての教員の授業を年2回は見て回り、人事面談は年3回実施。教員一人ひとりと徹底的に対話を重ね、改善のための指導を怠らない。
 グローバルリーダー育成を目的とした「海外派遣研修」も、同校ならではの取り組みだ。米国のボストン・ニューヨークを訪れ、ハーバード大学、MITメディアラボ、ニューヨーク連邦準備銀行、国連本部などを訪問。最終日にはアスペン研究所を訪れ、「世界の食料問題の解決策」をテーマに、生徒たちがこれまで探究してきた研究の成果を専門家の前でプレゼンテーションした。
「生徒たちは勉強、部活をしながら学校行事にも取り組み、その上でこうした探究活動を行っています。もちろん、とてもたいへんだと思いますが、そんな濃密な毎日をとても楽しんでいます。何ごとにも積極的に取り組む集団の中で切磋琢磨し合う生徒たちはとてもタフで、見ていて本当に頼もしいと感じます」

MITでの海外派遣研修

 武内さんが教員を志したのは、理科大在学時のこと。教職課程を履修するなかで、強く印象に残るエピソードがあったという。
「教育原理の試験があって、記述式問題が中心だったのですが、後日、僕の答案を見た教授から、『君の答案はすばらしい。本気で教員になりたいなら、こういう会があるから、ぜひ参加してみないか』という電話がかかってきたんです。行ってみると、都立高校の現職の校長先生が講師を務め、教員採用試験を受験する学部生に向けて論文指導をする勉強会でした。“理科大の教育力”に驚くと同時に、とてもありがたかったですね」
 最後に、現在の理科大生に向けてメッセージをお願いした。「豊富な時間を活用して、高い専門性を獲得してほしい。そして、ぜひ海外を経験してグローバルな視野を身に付けてほしいですね」