※内容は「東京理科大学報」 vol.201 掲載時のものです。

現状の延長線上ではなく、広い視野で未来を見つめる…
理科大で、研究者としての基本姿勢を学びました

明日の肌を変える化粧品を創り出す研究者
ポーラ化成工業株式会社 スキンケア開発室長
2000年理工学部工業化学科卒業

赤塚 秀貴さん

ポーラ化成工業株式会社 スキンケア開発室長
2000年理工学部工業化学科卒業
2000年、東京理科大学理工学部工業化学科卒業。08年、東京理科大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。2000年、ポーラ化成工業株式会社入社。現在は同社スキンケア開発室長を務める。

自分を変えなくては……。
赤塚秀貴さんが理科大を志したのは、こんな焦燥感からだった。

「高校時代は硬式野球に夢中で、部活動を引退する時期になってようやく、自分が将来の進路について何もイメージできていないことに気付きました。そんなとき、先輩から『東京理科大学の学生は真面目でよく勉強する』という話を聞いて、そんな学生たちが集う環境に自分も身を投じてみたいと思ったのです」
 学部時代には、有機工業材料 (コロイドおよび界面化学)を研究テーマとする阿部正彦教授の研究室に所属する。赤塚さんにとっての阿部教授像を聞くと「最強のリーダー」という答えが返ってきた。
「進むべき方向だけを明確に示し、目標に到達するプロセスは学生自身に考えさせる……そんな先生でした。同時に“ものごとを現状の延長線上のみで捉えてはいけない”という研究者としての基本姿勢を学びました」
 卒業後は、ポーラ化成工業に入社。2005~08年には、より研究の幅を広げたいと理科大の博士後期課程に入学。毎週土曜日に野田キャンパスまで通って研究に取り組んだ。
「社会を経験した後で大学に戻ると、自分がいかに恵まれた環境で研究していたかを再認識することができました。研究設備はもちろんですが、人的資源の豊かさは理科大の財産だと思います。さまざまな分野のエキスパートたちが集まる場で、改めて新鮮な刺激を受けました」

学生時代の研究室で

 博士後期課程を修了した2008年、自身の研究成果を“化粧品業界のオリンピック”といわれる「国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会」で発表する機会を得る。演題は「セラミド-2を1%配合したローションによる皮膚バリア機能の強化」だった。
「セラミドは、肌のバリア機能や水分保持機能を担う角層細胞間脂質の主成分です。この研究では、化粧水への配合が難しいとされてきたセラミド脂質を1%の濃度まで透明な状態で製剤化する技術を確立しました。その結果、バリア機能を高める透明化粧水を新たに世に送り出すことができたのです」

 現在はスキンケア開発室長として20人の研究者を率いる赤塚さん。リーダーとしての在り方を模索する中、いまも心に浮かぶのは阿部教授の姿だという。
「若い研究員の仕事ぶりを見ながら“自分ならこうするのに”という思いをグッとこらえて見守っています(笑)。若々しく、美しくありたいというお客様のニーズにゴールはありません。現状に満足せず、常に新たな価値を追い求めていきたいと思います」