※内容は「東京理科大学報」 vol.194 掲載時のものです。

留学生にとって一番大事なことは、優秀かどうかではなく、
文化の違いを理解しなじもうと自ら努力することなんです。

理科大と新疆ウイグル自治区をつなぐ研究者
新疆大学機械工程学院 副院長

メムティミン ゲーニさん

新疆大学機械工程学院 副院長

「日本に初めて来た時はとても驚きました。電車の中がとても静かで、乗客が全員うつむいて目を閉じているのが異様な光景だったんです。
私が大声で楽しく話していると、一緒にいた人に
『ゲーニさん、シー!』と注意されてしまいました(笑)」

 当時のことを思い出しながら、中国の新疆大学機械工程学院の副院長を務めるメムティミン・ゲーニ教授はとても愉快そうに笑う。
「私が生まれ育ったところでは、みんな気軽に『ハーイ』とあいさつをする。しかし日本ではそれがなく、最初はとても友達がつくりにくい国だと思いました」
 ゲーニ教授は、1990年4月、日本私立大学協会の事業である、新疆ウイグル自治区からの若手研究者受け入れプログラムを利用し、研究員として来日。東京理科大学の理工学部機械工学科・菊池研究室に所属した。国民性の違いや、物価の違い(当時新疆ウイグル自治区では、月給が日本円で2,000円程度であった)など、当初は戸惑うことも多かったというが、研究室の菊池正紀教授をはじめ、研究室の仲間、学生課の職員、学会で出会った著名な先生方など、さまざまに交流を深めることで、非常に楽しい毎日になったと話してくれた。

スポーツフェスティバルの試合にて。右から4番目がゲーニさん。

「理科大の人は、市役所の登録や引越しの手伝いをしてくれるなどとても親切でした。本当に人に恵まれ運が良かったと思います。また、流山市のスポーツフェスティバルに参加したり、大阪の花の万博を見に旅行に出かけたり…楽しいことも沢山ありましたね。スポーツフェスティバルではバレーボールをしましたが、理科大はウイグルからの留学生が多かったのでみんな背が高く、とても有利だったんです(笑)」
 その後は一度帰国するも再来日し、東京理科大学で博士(工学)の学位を取得する。そして、学位を取得した後も日本に残り、客員教員やJSPS(日本学術振興会)の海外特別研究員として、多数の業績を残した。現在は新疆大学に拠点を移し、計算力学を専門に研究を続けているが、毎年と言っていいほど来日するという。
 そんなゲーニ教授に、日本で学ぶ留学生にメッセージをお願いした。「私の国には、『盲人の国に行くならば、片目を閉じてください』という言葉があります。留学生にとって一番大事なことは、優秀かどうかではなく、文化の違いを理解し、相手の気持ち・立場に立って自らなじもうと努力することなんです。そのためにはどんな事があっても、立ち止まらずに頑張って欲しいと思います。日本の文化をきちんと理解すること、人脈をつくり他人との付き合いを大切にすること、それはとても重要なことです」