対談企画

Vol.4生命医科学研究所へ -特色を生かし、さらなる連携のための“決意表明”を-

特色を生かし、さらなる連携のための"決意表明"を
――まずは研究所の経緯と改称への理由からお願いします。
安部所長
生命医科学研究所は平成元年に設立され、免疫学での特色を強めながら、多くの研究者、技術者を世に送り出してきました。現在の研究所教員の半数が医師・獣医の資格があり、研究所で行われている研究の多くが、医学、医療に関連したものです。また私がセンター長を兼任しているがん医療基盤科学技術研究センターは本研究所の近隣の国立がん研究センター東病院と連携し、研究所のメンバーとともに学内の理・工・薬学部の先生や学生も参加して先端技術を用いたがんの早期診断法や効果的で、かつ副作用の少ない新たながんの治療法の開発に取り組んでいます。本研究センターは今年で4年目になりますが、着実に成果を上げ、製品化にまで到達したケースも出ています。こうした経験が自信にもなり、理工系総合大学としての東京理科大の持つさまざまなキャパシティを動員して、医学、医療の分野により大きな貢献にむけて本格的に取り組むという姿勢を明確にするという意味合いから名称変更に至りました。
――外部からの見え方だけでなく、"決意表明"でもある印象を受けます。
塚本理事長
生命科学と聞くと“生命の根源”のようなことを連想しますが、研究所で行われている研究を見ると、そのような基礎研究の分野に加え、がんやアレルギーのような医療分野に関する研究でも大きな成果をあげてきています。東京理科大ではすでにライフサイエンスの下地があり、医療との関わりも多い。今回の改称はこの分野を集約し、さらに将来の発展につなげていくものととらえています。
藤嶋学長
安部先生が中心となり、がんに関する市民講座や発表会などの活動も活発に行われています。若手の先生方もがんばっている。また医療との関連では薬学も特徴ある学部ですが、6年制となって初の卒業生74名が出まして、全員が薬剤師の国家試験に合格するという成果を上げることができました。理学・工学の底力は、信頼のおける新しい医療機器をつくることにも応用できます。今後国際的にもどんどんアピールしてもらいたいですね。
医療機関との"窓口"として、医療の実情に役立てる
――連携における医療機関等との"窓口"という役割については。
安部所長
私もかつては臨床内科医で医療現場を知っています。また、研究所のメンバーはその出自から、医学部や医療機関との結びつきも強く、医学部のない本学ではその役割を果たしています。理事長からお話しいただいたように、臨床応用を視野に入れた研究、所謂、トランスレーショナルリサーチは本研究所の大きな柱の一つです。一方、学内には理工系分野で優れた研究や技術が多く存在し、素晴らしい先生方が多くいらっしゃいます。学生数も多くとてもパワーを感じる大学です。本学には医学部がないために、医学、医療についてのなじみが薄く、進めている研究や独自にお持ちの先端技術が医療に結びつけて考えてみたことがないケースがあるように思います。私たちのがんの研究センターの活動の中で、国立がん研究センターの先生方に、がん医療で現在困っていること、必要とする技術などを学内の先生方、学生に話しをしていただくと、それならばこの技術はどうだろう、こんな装置なら作れる、といった話が出てくる。こういった理科大の持つ技術と臨床現場との橋渡しを今後も積極的に担っていきたいと思います。
塚本理事長
医科系の大学の先生方から、「臨床が忙しくて、基礎医学の研究ができない」という話をよく聞きます。本学は医学部がないが、基礎医学の研究が盛んに行なわれています。その研究を臨床にまで応用することで医療に貢献ができます。今回の改称で外部の医療機関の受け取り方も変わってくるのではないでしょうか。
藤嶋学長
医療の発展には細胞レベルから動物実験まで、じっくり研究できるような基礎医学に関わる人材が必要です。本学ではすでに医療側であるがんセンター東病院との連携もうまくいっており、さらに次のステップに進める力になると考えています。
東京理科大ゆえの「発展できる理由」とは
――学内にはさまざまな横の連携もありますね。
藤嶋学長
連携の仕組みの一つに、『総合研究機構』があります。研究分野が違っても、グループとして同じテーマに取り組むという制度ですが、まさに学部を超えてうまく活用できていますね。
――学生の気質としても、粘り強く協調性があると伺いますが。
塚本理事長
伝統的な学風として、粘り強く研究する姿勢があります。たとえわからないことがあっても、手を動かし頭を使い、なんとかやっていく。それが身についているようです。生命医科学研究所は設立から約25年になりますが、私学でこうした独立した研究所をもったのはおそらく初めてです。海外で毎年発表される「世界大学ランキング」(※)というものがありますが、当学は生命科学分野において2010年は国内4番目、世界では90番前後に評価されています。入試の偏差値だけでなく、こうした第三者の評価も知ってほしいですね。評価にはいろんな側面がありますが、この研究所が発展すれば、本学の柱にもなると思います。 学長:本学ならではの特徴ある施設になってほしいですね。
※注:大学評価機関 クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds)
藤嶋学長
本学ならではの特徴ある施設になってほしいですね。
「医理工連携」のセンスを持った人材育成
――教育という面では"医理工連携"に慣れた人材育成を目指していくと。
藤嶋学長
現在の野田キャンパスには薬学、理工、基礎工学部などがあり、そうした連携から新しい医療機器の開発も可能だと思います。積極的に取り組むことで人材育成にも生かせるのでは。
塚本理事長
幅広い理工系の知識を土台にした医学部というのは、あまり例がないと思います。本学のいいところは、医学部がない段階ですでに幅広い知識・技術があり、連携ができていること。その上で医学部を作ったら素晴らしいことです。それはもちろん簡単ではありませんが、本学にあってもおかしくないと考えています。長くライフサイエンスをやってきた上での社会貢献、それは日本だけではなく世界に貢献することにつながります。やはり嬉しいのは、卒業生が社会で活躍してくれていることですから。
安部所長
先日の新聞報道で『最近の学生は将来に対する不安が大きく、夢をもっているのは10パーセント程度』という記事を読み、非常にショックを受けました。今の自分がやっていることが将来にどう生かせるか。当研究所でいえば医療に対しての役割を果たすことですが、自分の研究がどう役立ち、人に対して何ができるか、それを示すことは大学としての使命です。本学には素晴らしい先生方がおられるし、まじめな学生も多い。研究施設も充実している。長い歴史を通じて社会で活躍している多くの先輩方がおられる。これらのリソースをフルに活用し医療の分野での貢献を果たしたいと思いますね。真の医工連携はすでにあるものを組み合わせるものではなく、スタートから一緒に考えていくような"ゼロ"からの連携。それを担う人材を育てる大学へ、その可能性は十分にあります。
大学が行うさまざまな取り組みとは
――大学レベルでもさまざまな取り組みを行い、発信されています。
藤嶋学長
本学の130余年の歴史には、大いに誇れるものがあります。学内には「実力主義」の伝統が発揮されていますし、一方でクラブ活動も盛んです。また教養を身につけるための取り組みもあり、幅広い知識を身につけてほしいと考えています。
塚本理事長
実はこれまで外への発信が十分ではありませんでした。例えば子供に理科の実験を教える機会など、今はあちこちで行われていますが、本学では20年ほど前からやっていたこと。現在、「科学のマドンナ」プロジェクト等もありますが、これは夏目漱石の『坊っちゃん』の主人公が物理の先生で、本学出身という設定なのがきっかけ。このように外への発信の姿勢も変わってきています。今回の生命医科学研究所の件も含め、東京理科大がどちらを向いているのか、もっとわかるようにしたいと思いますね。
安部所長
今後の課題でいえば国際化という面もあります。教員には外国での研究経験のある人が多くいますが、留学生の受け入れ態勢は十分ではなく、こういったことにも力を入れていく必要があるのではないでしょうか。
塚本理事長
現在、野田と葛飾の各キャンパスに留学生用の施設等も計画中です。外国の学生を呼べるインフラも整えていきたい。日本の学生はあまり外に行かないと言われますが、学生時代に外国人と交流することは重要な経験で、それも人材育成の一環。日本の若者が海外のどこへ出ても平気だと思えるようになり、もっとチャレンジできるような場にすることも課題ですね。
生命科学を学びたい人へのメッセージ
塚本理事長
これから生命科学の分野を目指す人に対しては、挑戦しがいのある分野ですから、先の心配や生活面の不安など考えたりせず、ぜひ挑戦してみてほしい。
藤嶋学長
研究所の学生や教員の方々と話しても非常に熱心に活動されており、対外的にも素晴らしい成果をあげています。今後の活躍をさらに楽しみにしています。

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