Vol.1 スペシャルインタビュー:現在

スペシャルインタビュー:現在「ますます広がる、光触媒の無限の可能性」

光触媒を広めるために「光触媒ミュージアム」
藤嶋学長先生は、神奈川科学技術アカデミーの理事長をされていた際に、光触媒ミュージアムをつくられたそうですが。
そうです。気軽に光触媒に触れられる施設を作ることで光触媒の研究をもっと知ってもらえるきっかけになればと思い、開設しました。
実際に光触媒を使用している製品を展示したり、夏休みには子供教室や光触媒実験教室なども開催し、光触媒を身近に感じていただけたらと思っています。


ここは、今から6年前に開設し、今年の1月26日で来館者が5万人に達しました。世界にここしか光触媒に関するミュージアムがないので、海外からも多くの来館者が訪れます。
このミュージアムが、光触媒を日本だけでなく世界へと広まるきっかけになればと思っています。
神奈川科学技術アカデミーとは
財団法人神奈川科学技術アカデミーは、神奈川県の科学技術政策と産業政策を具体化する総合的な産学公連携機関として、科学技術創造展開事業、試験計測事業、教育情報事業の3事業を実施し、地域産業の発展と県民生活の質的向上に貢献することを目指しています。
光触媒を広めるために
ところで先生が研究された光触媒とは。
酸化チタンを水につけて、強い光をあてる。酸化チタンから酸素と水素が出てきます。これが光触媒の原理です。そして、光をあてると同時に電流が流れ出します。つまり、光をあてるだけで、酸素、水素、電気エネルギーがとれるということを私は発見しました。
キーワードは酸化チタンと光ですね。
つまり、光触媒のみでエネルギーがとれるということですか。
ええ、そのようなことを見つけることができたということですね。太陽光を使って、水から水素がとれることで石油の代わりのエネルギーとして使用することができるのではないかと考えたのです。
ただし、水素でエネルギー問題を解決するにはまだ効率が追いつかないので、私は発想の転換をしました。今度は環境問題に応用しようと思ったのです。

酸化チタンというものはどこでとれるのでしょうか。
色々なところでとれます。
自然にはチタンの鉱物がいっぱいあり、安全な物質であるということも重要です。 歯磨き粉の中に入っていたりもします。光触媒として使用する時は、透明に塗らなくてはいけないので、さらに細かくし、水に溶かします。それを塗って乾かすと、光触媒のコーティング膜として使うことができます。
環境問題への応用にも
例えばどのような光触媒の応用ができるのでしょうか?
一つの環境問題の例として、高速道路のトンネル内の照明器具が上げられます。照明器具はトンネル上部にあり、長い間置いておくと土埃や排気ガス等で真っ黒になります。
そうすると、掃除をしなければならないのですが、交通規制をすると事故の原因になりかねません。そこで、照明器具の表面に酸化チタンを透明にコーティングして、徐々に付着する油汚れも水も分解できる力を使えば、掃除は必要ないだろうと考えました。実際に実験をしてみたところ、塗った部分は汚れが少なく、酸化チタンの力が発揮されていました。これは現在全国で使われています。
また、最近は日本もそうなのですが、特にイタリアやフランスは、車から出る窒素酸化物(NOx)をどう排除するかに関心があるようです。そこで、道路のブロックの表面を酸化チタンでコーティングすれば、太陽光のもとで車から出た窒素酸化物がその表面で分解されて綺麗な空気になるのではないかと考え、現在、実験をしています。
また、これとは他の性質として、鏡を曇らなくさせることができます。

それはどういう原理なのですか。
酸化チタンを鏡の表面上に塗って、光をあてると鏡の表面が「超親水性」になります。
超親水性とは、水滴が薄い水の膜として表面に広がっていく性質です。水滴がなければ、光が散乱されないため、曇らないということになります。
このような現象を見つけることができたので、現在は色々なところで応用、実用化されています。
より私たちの身近になっていく光触媒
それ以外にも私たちの身近な技術への応用はありますか。
そうですね。たばこの匂いを分解できるという働きもあります。例えば、造花の上に酸化チタンを透明にコーティングしておくと、部屋のたばこの匂いや汚れがとれ、花も汚れません。さらに効果的にするために、鉢の中に酸化チタンを使用した空気清浄機を入れた鉢植えを作りました。

空気清浄機にも酸化チタンが使われているのですね。
この空気清浄機のフィルターは、セラミックスでできており、ハニカム型という特殊な穴が、空気の通り道となります。この上に酸化チタンをコーティングし、中に紫外線ランプをいくつか入れています。そうすると光触媒の効果で、たばこの匂いがとれるのです。これを実際に新幹線の喫煙ルームにも応用しています。最近はウイルスも殺菌できるので、2009年から2010年に世界中を騒がせた新型インフルエンザなどのウイルスにも効果があると分かっています。
それから蛍光灯の表面にも酸化チタンをコーティングすることができます。蛍光灯の表面が汚れなくなり、しかも殺菌もできて、さらに匂いまでとれる。家庭で使用するにはもってこいだと思いませんか。

そうですね。蛍光灯が匂いをとるというのには驚きました。
他に、建物の外壁にも使われているそうですが。

はい。一番最初にこれを使用した建物が丸ビルです。それから普及してきて、今や日本中、そして世界中で使用されています。上海万博の日本館も、全部にそのような施工がされています。実際に油汚れの分解がどれくらい早くできるかやってみましょう。普通の家の外装タイルに油をたらしたものです。太陽光のかわりに紫外線をあてます。
消えてきましたね。これは水がかからなくても消えるものなのですか。
水をかけたときは油汚れを流して綺麗にできますが、水をかけなくても直接光だけで分解できるということです。このように光で分解もできますし、水があれば水で流すこともできます。
その他にも、テント材料に光触媒をつけたものを東京ドームで使用しています。外側が汚れにくくなり、光を吸収しないので涼しく、さらに明るいなどの利点があります。これは現在、体育館などでも使っていただいています。
また、工場などがあった土地はかなり汚れていますよね。土を綺麗にする時に、土の上に光触媒のフィルムを被せておけば、有害な有機物が光触媒で取り除かれ、自然に綺麗な土地ができ、農業に活かせるというわけです。

光触媒というのは、何にでも応用でき、エコの面から考えてもこれからますます期待ができるものだと分かりました。これから未来に向けてもっと発展していってほしいですね。

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